「関西演劇祭」開幕、この演劇祭には夢しかない!

「関西演劇祭2023」が、11月11日(土)~19日(日)にかけて、COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールにて開催中です。今年も有名無名を問わず、全国から多数のエントリーがあった劇団から厳選された10組が選出。それぞれ磨きのかけた舞台を披露し、その出来栄えを競います。

今年で節目となる5回目を迎えた「関西演劇祭」のテーマは、「つながる演劇祭」。演劇と観客がつながる、演劇と関係者がつながる、そこにいるすべての人の想いを、作品を通して社会に発信し、共感しあえる、誰もが何者かになれる、そんな「頑張るを応援する」演劇祭を目指します。

開幕初日となる11月11日(土)、演劇祭の舞である大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで開会式が執り行われ、参加劇団の代表者が意気込みを語りました。また、実行委員長の南野陽子さん、フェスティバル・ディレクターの板尾創路、SPサポーター(審査員)の株式会社ネルケプランニング 代表取締役社長・野上祥子さん、映画監督の三島有紀子さん、株式会社NHKエンタープライズ 第3制作センター ドラマ部 エグゼクティブ・ディレクターの岡田健さん、そしてスーパーバイザーの西田シャトナーさんが参加劇団に激励の言葉を贈りました。

学生から50代まで! 幅広い年齢層から個性派劇団10組が集結

開会式の司会進行を務めたのは、木尾モデルと佐月愛果(NMB48)。参加する劇団は、「Artist Unit イカスケ」、「演劇組織KIMYO」、「餓鬼の断食」、「劇団イン・ノート」、「劇団FAX」、「バイク劇団バイク」、「PandA」、「MousePiece-ree」、「無名劇団」、「ヨルノサンポ団」の10組です。

「Artist Unit イカスケ」は、「もうすでに楽しいです! 開始10分でこんなに楽しかったら、18日はどうなるのか!」とハイテンションで勢いづけます。

「演劇組織KIMYO」は、「これ(関西演劇祭)はまるで演劇の甲子園ですね! COOL JAPAN PARK OSAKAの砂を持って帰りたいと思います」と挨拶し、他の劇団から「負けてるやん!」と鋭いツッコミを飛ばされていました。

「餓鬼の断食」は、地元関西で、唯一の学生劇団。最年少ということもあり、「後輩に求められることは、先輩の背中を追い越すだけ」と堂々と意気込みを。「高速の関西弁でまくしたてて、演劇祭を後輩としてぶち上げていきたいです」と気を吐きました。

「劇団イン・ノート」は東京から参戦。「この場にいられることが大変光栄です」と緊張気味に語り、「未熟者ですが、この場で新しい出会いを掴んでいろんな人とつながれていけたらなと思います」と想いを語りました。

京都の劇団、「劇団FAX」は、「細々とやってきた我々が、こんな大舞台に出していただけて恐悦至極」と喜びを。「しっかりストレートな会話劇を楽しんでいただけたらなと思います」とアピールしました。

「バイク劇団バイク」は、ピン芸人の大谷健太が一人で参戦。みずからの劇団を「ヴェールに包まれたグループ」と紹介しながらも「演劇祭、アクセル全開で行きます! ブンブン!」と吠え、木尾から「わかりますよ!」とツッコまれていました。

「PandA」は福岡から参戦のベテランです。「近年、演劇界はいろいろと大変だったんですが、演劇をやっている若者たちがキラキラしている姿を見て、もうすでにおじさんは泣きそう」と感極まっている様子。「僕らとMousePiece-reeさんで、だいぶ平均年齢をあげちゃってるんですけど、若者のギラギラとおじさんので盛り上げていきたい」と意気込みます。

続く「MousePiece-ree」も、20年以上のベテラン。「50過ぎのおっさん3人が21年やっているMousePiece-reeです。若い人たちに負けないように、エネルギッシュに行きたい」とアピールしました。

「無名劇団」は、関西の高校演劇を母体にした劇団。「当時、高校演劇部が全国大会で準優勝した作品をリメイク上演することになりました」と語り、「高校演劇は泥臭くてかっこいいと思ってもらえるようなお芝居がしたい」と自らを奮い立たせます。

関西を中心に活動している「ヨルノサンポ団」は、まさに新型コロナ真っ最中の3年前に旗揚げ。「小規模でやっていたので、まさかこんな舞台に立てるなんて夢のようです。出るからには勝ちたい」と気合十分のコメント。

5回というひとつの節目を迎えられて「大したもんやな」

演劇祭の実行委員長を務める南野陽子さんからも、参加劇団に向けてこんな言葉が贈られました。「練りに練られて今日、来られていると思います。緊張もされていると思います。ステージ上で新たに感じる感動、感覚、感情を、思い切り胸に抱いて作ってこられた作品を、私も客席で楽しみたいと思います」

第1回からフェスティバル・ディレクターを務める板尾創路は、5回目を迎える演劇祭に感慨深げな表情。「5年続くというのは一つの節目。大したもんやなと思ってます。でも、始めたときから上演のルールとか全然変わってないんです。それで5年続いたということは、これで間違ってなかったということ」と 改めて振り返りました。さらに、これまでの演劇祭に参加した人々の実績についても話しました。「いろんな分野で皆さん活躍されている。僕も普通に仕事の現場でお会いしますし、成果は出ている。売上こそ出ていませんが(笑)」と裏事情もポロリ。続けて「交際の場ともなっていますので、みなさんどんどん付き合っていただいて、役者と役者の子供が生まれて、また演劇祭に出る。それが真の目的でございます。期間中に交際された方は、ぜひカップルで申し出てください」と話し、会場を湧かせていました。

スペシャルサポーター(審査員)の野上祥子さんは、ミュージカル「テニスの王子様」、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」など2.5次元ミュージカルを中心に多くの舞台をプロデュースするネルケプランニングの代表で、昨年に続いての参加です。「何が嬉しいって、舞台上に立つ人たちがものすごく元気。(上演時間)45分で見せていただきたいのは、各劇団の生き様や色、個性なんですけど、みなさんがそれぞれ自分に向き合いながら、お客さんに向き合いながら新しいつながりが見つかればいいなと思いますし、その手助けができたら。丁寧に書く劇団に向き合いたいと思っています」

映画「幼な子われらに生まれ」や「しあわせのパン」「繕い裁つ人」「Red」を手掛けた映画監督・三島有紀子さんも昨年に続いての参加。今回の演劇祭にこんな期待を寄せます。「去年、参加した中から役者2人の方に、新作映画(「一月の声に歓びを刻め」24年2月公開)に出ていただいたというつながりをつくることができました。今年もそういうつながりができたらいいなと思います」

連続テレビ小説や大河ドラマなど多数のドラマを手掛ける株式会社NHKエンタープライズ 第3制作センター ドラマ部 エグゼクティブ・ディレクターの岡田健さんは、「皆さんユニークでギラギラしていて、『これからやってやるぞ』という気合が感じられてとても楽しみ」とうれしそう。「初参加ですが、どういうドラマが繰り広げられるか今から楽しみ。思い切ってやってみてください。我々も受け止めて丁寧に審査したいと思います」とエールを贈ります。

最後に、スーパーバイザーとして参加する脚本家・演出家の西田シャトナーさんからも挨拶が。「全劇団のゲネプロを見させていただきましたが、芝居全てすごくおもしろかったです」と太鼓判。また、舞台上だけでなく、裏方のスタッフとのかかわりにも着目していたと話し「キャストと演出家とスタッフの付き合いを見ているだけでも胸いっぱいになるチームもありました。その舞台のまわりのことも審査員にしっかり伝えますので、安心してやってください」と激励しました。

また、過去に「関西演劇祭」で受賞したことで各方面とつながり、目標だった舞台で活躍している方々からのメッセージVTRを紹介する一幕も。2021年にベストアクトレス賞・観客賞を受賞した福冨タカラ、2022年にベストアクター賞を受賞した北野秀気、2021年にベストアクター賞を受賞した寺井竜哉がコメントを寄せました。

なかでも寺井は、「関西演劇祭2021」で審査員を務めた行定勲監督に見出され、映画「リボルバー・リリー」に出演。板尾もこの映画に出演しており、共演シーンはなかったものの、「あとから聞いて『めっちゃいい役、してるやん!』と。すごいなあ」と感心した様子でした。
そして、今年も参加している「Artist Unit イカスケ」の作・演出、青木道弘も演劇祭でつながりを見つけたひとり。「野上祥子さんと出会い、『サンリオ男子』の演出をやらせていただきました。この演劇祭、夢しかないから!」と参加劇団に発破をかけました。

今年の参加劇団はハイテンション!?「団体旅行に行ってきたみたいに和やか」

開会式を終えた南野陽子さんと板尾創路が囲み取材に応じました。
今年初めて実行委員長を務める南野さんは「今からワクワクしています」とにっこり。また、関西演劇祭の見どころをこう語ります「お芝居を観ると、自分の感性というか、『私はこんなふうに考えるんだ』『自分はこういうのが好きなんだな』と、いろいろ感じることができます。なので、そのままでいらっしゃったらいいなと思います。そうすれば、きっと何か持ち帰るものがあるはず」とアピールしました。
過去4回の「関西演劇祭」を見続けてきた板尾は、今年の印象をこう語ります。「今年、何か妙に劇団さんのテンションが高い。いつもはもうちょっと緊張していておとなしいんですけど、(今年の劇団は)もう2~3泊、団体旅行に行ってきたみたいに和やかで、みんなテンションが高いです。4年前はこういうのはあまりなかったですね」
また、これまで数多くの舞台に立ってきた南野陽子さんは、演劇に対する情熱をこう語りました。「デビューは40年近く前になりますが、最初がヨーヨーを構えたドラマ(『スケバン刑事』)よりも前に舞台に立っていまして、そこから年に1作品は必ず出ています。大きい劇場から小劇場まで、いろんな作品に出ていて、そういう場はこれからも大切にしていきたいと思います」

また、南野さんの地元でもあります。「客様の反応は場所によって違うんですが、関西のお客さんは温かく、参加意識を持って観てくださる方が多いのかなと感じます。『わーっ!』て笑いながら手を打っていただくと私たちも『より頑張っちゃう!』みたいなところもあるので、そういう意味では関西のお客さんには、一緒に(舞台を)作っていただいていると感じますね」と、関西の観客の温かさを語りました。

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