ほぼ全ての内壁撤去へ ずさん工事の八郎山トンネル、和歌山

ずさんな工事がされていた県道長井古座線の八郎山トンネル(和歌山県串本町)=和歌山県提供

 和歌山県は10日、覆工コンクリート(内壁)などにずさんな工事が見つかった県道長井古座線の「八郎山トンネル」(串本町―那智勝浦町、711メートル)について、今後の対策などを検討する「第2回技術検討委員会」を和歌山市で開いた。内部の支柱も詳しく調査する必要があるため、ほぼ全ての覆工コンクリートの取り壊しを決めた。

 このトンネルは12月に供用開始予定だったが、内壁のほとんどに空洞や薄い場所があることや、業者が書類を改ざんしていたことが発覚した。県は7月下旬に請負業者の淺川組(和歌山市)と堀組(田辺市)を6カ月の入札資格停止処分とし、専門家による「技術検討委員会」を設置。9月の第1回会議から対策を議論している。対策工事は業者負担で実施する。

 今回の会議では、トンネルの中心が最大で14.4センチずれて造られていたことや、アーチ型の支柱「鋼アーチ支保工」が正しい場所に設置されていなかったことなど、県の調査で新たに分かったことを基に対策を検討した。

 この支柱は1メートル置きに約700カ所あるが、多くの箇所で設計より道側に設置されていると推測された。道路上の空間が狭くなり、通行時の安全性が確保されない恐れがあるという。

 内壁を剝がすのは、それ自体が不良であることのほか、支柱が正しく設置されているかを目視しながら直接調べ、そのまま利用できなければ設置し直す目的もあるという。

 会議終了後に会見した京都大学名誉教授の大西有三委員長は「(施工不良の)発端は測量のずさんさ。途中でミスに気付いたのに修正しなかった」と述べた。掘削時はトンネルの外の基準点から、随時測量しながら掘り進めるが、やるべき手間を省いたために、測量の精度が低くなり、徐々に誤差が拡大したと考えられるという。「修正にはかなりの労力が必要だろう」との認識を示した。

 次回の会議は12月20日に開く予定。

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