【袴田さん再審】「くり小刀は凶器ではない」証拠に疑念…弁護団が検察の有罪主張に反論し無実を訴える(第2回公判まとめ)

11月10日、袴田巌さんの再審=やり直しの裁判の2回目の公判が行われました。公判後に弁護団は会見を開き、検察側の立証は脆弱であると指摘しました。

(弁護団 小川秀世 弁護士)

「(検察側は)脆弱な立証であったと分かっていただけたと同時に、雨がっぱやパジャマや、かね袋にねつ造があったのではと伝わった」

公判後の会見で検察側の主張を強く批判し、袴田さんの無実を訴えた弁護団。

1966年、旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審で、検察側は「犯人はみそ工場関係者の袴田さんで、犯行着衣はみそタンクに隠した」 などと、袴田さんの有罪を主張しています。犯人がみそ工場関係者である理由として、犯行現場に凶器である「くり小刀」が落ちていて、さらにその鞘が同じく犯行現場に落ちていた従業員の雨がっぱのポケットに入っていたことなどや、さらに袴田さんにアリバイがなく、その行動をとることができたなどと主張しています。

これに対して、2回目の公判では弁護団が証拠を元に反論。

「雨合羽は重くてゴワゴワと音がする」「雨も降っていない中、夜中に侵入するものが着る理由がない」

「くり小刀」については法医学者の鑑定から、被害者の体に「くり小刀では形成することのできない傷が存在する」と説明した上で、包丁が凶器として使用された可能性を指摘。

公判では、「くり小刀」や「雨がっぱ」などの証拠が展示され、裁判長らが直接確認しました。

公判後に会見を開いた弁護団は…

(弁護団 角替清美 弁護士)

「写真だと大きさの感覚とかも分からない」「あのくり小刀で4人を殺しますか という、そこを見てもらいたい」「あれを見れば凶器じゃない、こちらは自信をもって出しまし た」

「袴田さんは犯行が可能だった」という検察の主張には「単なる抽象的な可能性」と批判「意味ある証拠は何もない」と反論しました。

2回目の公判を終えた袴田さんの姉・ひで子さんは…

(袴田ひで子さん)

「今日はとてもよかった、裁判はこんなものかと思っていた。弁護団が捜査資料を読み込んでくれているということが分かった」「弁護団の力の強さに感謝している。探し出して読み込んでくださったのに感謝感激です」

次回の裁判は11月20日で、最も重要な証拠、犯行時の着衣とされる「5点の衣類」が争点となる見込みです。

第2回再審公判のポイントを整理します。2回目の公判では弁護団が検察の主張に反論しました。

弁護団によりますと、凶器とされる「くり小刀」は、被害者の傷の状態からみて「凶器ではない」

「雨合羽」については、そもそも犯人がこの雨合羽を着て犯行現場に行っていない。

雨合羽のポケットに入っていたとされる「くり小刀」の鞘については、製造元を調べただけで「くり小刀」と「鞘」が一致したとしていて、鑑定・検証がされていない。

検察は、事件発生直後に雨合羽のポケットから鞘が発見されたと主張するが、1週間後の実況見分調書で、初めて鞘が入った写真が添付されていると反論しています。

次回、3回目の公判は20日に行われる予定で、犯行時の着衣とされる「5点の衣類」が争点となります。この衣類は、袴田さんのものだとされ、死刑判決の決め手となった証拠です。一方、再審開始の決定の中で、静岡地裁と高裁が共に5点の衣類が、捜査機関によりねつ造された可能性を指摘、非常に重要な争点となります。

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