【今週のサンモニ】恥を恥とも思わない「おまゆう」な超無責任番組|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今回は、いわゆる「おまゆう」の連発でした。

「補償のスピードが遅い!」と言っていたのは誰なのか

2023年11月12日の『サンデーモーニング』は、この番組が恥を恥とも思わない超無責任番組であることを再確認しました。

関口宏氏は、コロナの「ゼロゼロ融資」をめぐる次のようなニュースを淡々と読み上げました。

関口宏氏:新型コロナの影響で経営が悪化した中小企業などに政府系金融機関が、実質、無利子無担保で融資したいわゆる「ゼロゼロ融資」。このうち1兆円が回収不能もしくは回収困難となっていることが会計検査院の調べでわかりました。ゼロゼロ融資に国が財政的な支援をしているため、融資を回収できなければ、国民の負担になる恐れがあります。

ゼロゼロ融資をめぐっては、コロナ禍での倒産を一時的に抑える効果などがあったものの、当初から事前審査の甘さも指摘されていて、実際融資を利用した後に倒産した企業が今年の上半期だけでも300件を超えました。

『サンデーモーニング』は、コロナ禍における企業への緊急融資をめぐって、政府の事前審査が甘かったことで1兆円もの融資を回収できなくなり、そのツケを国民が支払わされることになるとして政府を批判しました。

しかしながら、この批判は極めて無責任です。2020年4月の安倍政権が当初策定した緊急経済対策に対して、「補償のスピードが遅い!」「補償の規模が小さい!」「申請の負担を軽くしろ!」「後手後手だ~~~!!!」と公共の電波を使って毎週毎週繰り返しヒステリックに叫んでいたのは、紛れもない『サンデーモーニング』であったからです。

令和2年4月7日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

情報操作と印象操作で国民の怒りを爆発させた

コロナ禍において、『サンデーモーニング』をはじめとする日本の情報番組&ワイドショーは、【恐怖に訴える論証 appeal to fear】【同情に訴える論証appeal to pity】といった【感情に訴える論証 appeal to emotion】と精緻な感染予測もできない自称専門家の【権威に訴える論証 appeal to authority】を連発してコロナ禍を煽り、無制限の経済対策に慎重であった安倍総理をあたかも国民の生命を奪う人殺しのように【人格攻撃ad hominem】しました。

このような情報操作と印象操作に晒された日本国民は政府への怒りを爆発させ、公明党がこれに呼応することによって、甘い事前審査に基づく莫大な緊急経済対策が実施されたのです。

『サンデーモーニング』がどの口で政府を批判するのか、まさに「おまゆう」の典型と言えます。以下、過去の放送で彼らが何を言っていたのか、一部を紹介したいと思います。

2020年4月5日<自粛と補償 日本の経済対策は>

荻上チキ氏:日本の経済政策はスピード感も規模感もまだまだ遅い。支給対象につても絞ろうとしてしまっている。絞れば絞るほど事務手続きがかかっていく。そういうことをしない方が、スピード感が出てくる。

松原耕二氏:少なくとも早く手を打つことだ。今のままではすべてが後手後手に回ってしまう。

2020年4月12日<補償なき休業>

佐高信氏:ハッキリと休業補償しないと人間休業になってしまう。

アナウンサー:「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償する事は現実的ではない」と語った安倍総理。一方英国では、休業補償として賃金80%を肩代わり。日本の緊急経済対策、条件が厳しくすべての人が貰えないことへの不満。この給付額では事業を継続できないとの声も。

田中秀征氏:突き上げられてからやるのではなく、同じ出すなら先手を打ってやれと。

元村有希子氏:政府に足りないものが2つある。一つは危機感、もう一つはスピード感だ。申請や承認に時間がかかる!小さい店舗の人達は今月の家賃が払えなくて困っている。このあたりのセンスの欠如は見ていてもどかしい。

青木理氏:呑気なことをしている場合ではない。補償しなければ感染も止まらない。救急の対策なので補償を一括しないと取り返しがつかなくなる。

佐高信氏:安倍氏が首相になったことが緊急事態だ。

これらのコメントを見ればわかるように、『サンデーモーニング』の番組コメンテーターは、審査を甘くして莫大な補償をすぐに行うよう、政府に対して闇雲に要求していたことがわかります。

その結果が、関口宏氏が報じた1兆円もの無駄な借金となって国民に返ってきたのです。際限のない補償に慎重な姿勢を見せていた安倍総理に対して、番組コメンテーターが卑劣な人格攻撃を行っていることも確認できます。

同質な集団が過激

2020年4月19日<給付の手続きや時期は?>

藤田孝典氏(VTR):本当に遅すぎる。1回限りの現金給付ではどうにもならない。

涌井雅之氏:平時の発想と全く変わっていない。これが逐次投入という形で一番重要なポイントの転換点を見失ってしまった。これが拡大に繋がっているとしか思えない。

2020年4月26日<補正予算案に…>

姜尚中氏:要するに感染症対策というのは命を守ることだ。非常時には「あれがこれが」でやるしかない。自治体への臨時交付金が1兆円というのはあまりにも少ない。やっぱり、自治体に裁量権を預けて事業を補填するしかない。だからこそ8割の接触減ができる。

2020年5月3日<雇用調整助成金のカベ>

安田菜津紀氏:どんな政治家を選ぶのかが、どれほど人の命を左右していくのかということをひしひしと感じる。公的支援が一歩先どころか、二歩、三歩も遅れてなかなか届いていかない。現状決まっている給付や支援策をどう拡充していくかが問われてくるし、雇用調整助成金のような窓口で心が折れてしまうような申請の負担を一刻も早く軽くしていくべきだ。

荻上チキ氏:雇用調整助成金の使い勝手をよくする、支給のスピードを上げていく、支給の幅を広げていくことが重要だ。事業者の家賃負担を単に補助するだけでなく、積極的給付をした上で返済不要な仕方でお金を給付して行く。一旦は貸し付けをしていくが、実際に家賃に使った場合は「返さないでいいですよ」というような形で積極的に最初に撒いて行った方がいいということが与野党からも言われている。こうした第二・第三の経済対策を打っていくことでコロナ関連死あるいは失業・倒産を防いでいくことが必要だ。

2020年5月31日<第二次補正予算案 支援は届くのか?>

荻上チキ氏:給付に関しても、コロナが1年、2年と続くことを考えるのであれば、その都度新たに書類を書いてそこに振り込まれるという形だけではなくて、継続的に振り込まれるという形も考える必要がある。よく財源が心配されたりするが、日銀が国債の買い入れの規模の条件を取り払っているので、当面は財源の心配をする必要がない。むしろ現在のコロナ対応に出し渋りをしてしまうと、長期的なショックが長引いてしまう。ここは大胆にしっかりとやって欲しい。

これらのコメントからも、『サンデーモーニング』が、まるで聞く耳を持たない子どものように、後先考えずに法外な補償を要求していたことがわかります。

まさに、多様性のない同質な集団が過激化して行く【集団極性化 group polarization】の典型例であると言えます。

日本のコロナ禍は日本のテレビが造った人災です

そもそも、日本をゼロリスク社会にして緊急事態宣言の乱発と延長に大貢献したのも『サンデーモーニング』をはじめとする日本のテレビです。

2020年春、ごく普通の認識を持っていれば、明らかに緊急事態宣言は不必要でした。番組は、この世の終わりのような危機感を煽ることで国民を恐怖のどん底に叩き落としたのです。

結局、日本で行われた緊急事態宣言は計4回、日本国民がテレビの洗脳から解かれた2022年以降は実施されていません。日本のコロナ禍は『サンデーモーニング』をはじめとする日本のテレビが造った人災なのです。

1回目の緊急事態宣言:2020/4/7~2020/5/25
2回目の緊急事態宣言:2021/1/8~2021/3/21
3回目の緊急事態宣言:2021/4/25~2021/6/20
4回目の緊急事態宣言:2021/7/12~2021/9/30

日本企業に不必要な休業を強いた上で、その休業を手厚く補償することを要求し、挙句の果て今になってそのツケを批判する『サンデーモーニング』は、無責任極まりないと言えます。結局、テレビに洗脳された日本国民は、総額で100兆円を超えるコロナのツケを将来の子どもたちに残したのです。

いつも「女子アナ」が謝罪する

さて、先週の『今週のサンモニ』で紹介した『サンデーモーニング』による「フェイクニュースのフェイクニュース騒動」ですが、番組が公式websiteと今週の放送で「お詫びと訂正」を発表しました。まさに恥を恥とも思わない「おまゆう」な高慢さが招いた本当に人騒がせなフェイクニュースでした。

【今週のサンモニ】〈緊急寄稿〉AI画像をめぐる「フェイクニュースのフェイクニュース」|藤原かずえ | Hanadaプラス

論理的に言えば、フェイク画像をフェイクと断定するのは、「ないこと」を証明する【悪魔の証明 Probatio diabolica】であり、「アリバイ」のような【不可能性 impossibility】を立証しない限り、断定は論理的に不可能です。

私たちにできることは、フェイクであることの【真実性 authenticity】を状況証拠から説明するだけです。

このような論理の基本を理解していない素人が、自らを全知全能の神であるかのように認識して制作しているのが『サンデーモーニング』であると言えます。番組は、なぜこのような誤りが生じたのか、視聴者に対して自分なりに説明する責任がありますが、その解答は論理的な推論に無知であることに必ず帰結することになります。

なお、この番組を観ていて、いつも同情してしまうのが「女子アナ」の皆さんです。

ギャランティを得ているとはいえ、平素から極めて非論理的な原稿を読まされた挙句、謝罪原稿まで読まされるのは、あまりにも非人道的な扱いです。今回も水野真由美アナが謝罪の役目を見事に務めました。

平素から、罰ゲームのような「手作りフリップ」を制作させられ、その極めて複雑なシークエンスのプレゼンテーションをけっしてミスすることなく当然のように完結させるというプロフェッショナルな技術には、心から「アッパレ」と称賛させていただきたく思う次第です(笑)

藤原かずえ | Hanadaプラス

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