中止になった2020年夏の甲子園〝開催〟「あの夏を取り戻せ」聖地での2カード発表 29日に夢舞台

新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止された2020年夏の全国高校野球選手権大会に出場がかなわなかった高校球児が集う「あの夏を取り戻せ 全国元高校球児野球大会2020-2023」(29日・甲子園球場開幕)の実行委員会が14日、都内で会見を行い、29日に甲子園で行われる特別試合の対戦カードを発表した。

同大会には、2020年に各都道府県で開かれた独自大会の優勝校や上位チームなど47都道府県49地区から40チームが参加予定。兵庫県内の各球場で交流戦を行い、29日に甲子園で全チーム参加の入場行進やシートノックなどが行われる。抽選で4チームを選び、佐久長聖(長野)―松山聖陵(愛媛)、関大北陽(大阪)―倉吉東(鳥取)の各OBチームが聖地で対戦することになった。

プロジェクト代表で、武蔵野大3年の大武優斗さん(21)も元球児で、戦後初の夏の甲子園中止を経験。「10年経っても20年経っても、甲子園がないことを言い訳に、前に進めない選手が多くいる。僕自身もそう。だったら、無くなった自分たちの代であの夏を取り戻したい。終止符を打って、次のステップに進みたい。今年の11月29日に、やっと終止符が打てる。終止符を打って、前に進むことを目的にしている」と、手作りの甲子園大会を行う趣旨を述べた。

2020年夏に行われた大阪府の高校野球独自大会は、準決勝で日程を打ち切った。履正社とともに勝ち残った関大北陽高の元内野手で、関西大3年の藤澤駿平さん(21)は準硬式野球部で野球を続けている。「小さい頃から甲子園を夢見ていたいので、あの夏は絶望という言葉が一番合う。この大会で、前に進める。うれしくて仕方がない。全力でプレーしたい」と、夢舞台を心待ちにした。

「あの夏を取り戻せ」は、クラウドファンディングや企業からの協賛で運営費や参加選手の宿泊費、交通費をなどをまかなう。資金不足が課題だったが、戸建住宅を主力とするオープンハウスグループがスペシャルナビゲーターとして、開催を全面バックアップ。目標金額だった約6450万円が集まった。

同社社長室の謝敷正吾氏(36)は、大阪桐蔭高で甲子園出場経験がある。「グラウンドに立つ夢が絶たれた高校球児のホームグラウンドが無くなってしまったという思いが、私たちにも伝わった。プロジェクトの全面支援を通じて、できる限り多くの球児に甲子園に〝ホームイン〟してほしい。出場できなかった無念を晴らすことによって、未来への扉をオープンにして全力で進んでほしい」と、支援を決めた経緯を説明した。

同社代表取締役社長の荒井正昭氏(58)も、元高校球児。謝敷氏によると「当社代表の荒井がこの話を聞いた時に、元高校球児の皆様の熱い思いに胸を打たれまして、支援を即断した」と明かす。SNSでの応援を行う「好支援プレイヤー」として、元ヤクルトの上田剛史氏(35)も登場した。

資金面の問題をクリアした大武さんは「資金を集めることができた。(選手の)宿泊費と交通費を含めて集まったというところで、完全開催です」と、4年越しとなった2020年夏の甲子園のプレイボールを宣言した。

(よろず~ニュース・杉田 康人)

© 株式会社神戸新聞社