由布市の市民提案型事業に「湯平藝文會」 地域内に常設アート、観光客らの周遊促す【大分県】

渡辺真紗美代表(左)と福嶋雄嗣副代表=由布市湯布院町湯平

 【由布】由布市が本年度から始めた「市民提案型連携協働事業」に、同市湯布院町湯平地域の住民らでつくる「湯平藝文會(げいぶんかい)」が採択された。アートで湯平を盛り上げようと芸術作品を点在させ、散策を楽しめるようにしたいという。

 同団体は、2014年に湯平へ移住してきた造形作家・渡辺真紗美代表(40)や、同じく移住者のクリエーター福嶋雄嗣副代表(55)ら5人を中心とした会。渡辺さんは数多くのアートイベントの空間演出や企画に携わった経験を持つ。

 湯平地域は20年7月、豪雨に見舞われ大きな被害を受けた。渡辺さんと福嶋さんは翌年、「みんなの希望になるような作品をつくろう」と湯平温泉街の壁面に電灯を組み合わせたアート作品を設置。常設し、周囲の人からも好評だという。

 今回の事業は「YUNOHIRA ART SIGHT(ゆのひらアートサイト)2023―25」と名付け、地域内に常設のアート作品を飾る。目標は3年間で12点。温泉街や自然豊かな森林公園などに置き、観光客らの周遊を促す。温泉のイメージが強い同地域だが、芸術や自然の魅力にも触れてもらう狙い。

 作品をつくるアーティストは、地域にゆかりのある人らを同団体が選定し関係先との調整役を担う。現地を見て、感じたことを作品に表現してもらう。アーティストと市民が交流したり、市民が参加したりできるような形式も検討しているという。

 芸術文化活動をする市民の発表の場も設ける計画。事業を通して市内の芸術文化活動の振興、観光客や関係人口の増加を目指す。

 渡辺さんは「採択された喜びとともに責任も感じている。アートの街となるよう基盤づくりをしていきたい」と話す。

<メモ>

 由布市の市民提案型連携協働事業は、地域課題の解決に取り組む市内の団体や企業に最大1千万円の補助金を交付する。財源はふるさと納税を充て、事業期間はおおむね3年。9団体の応募があり、書類審査とプレゼンテーションを経て湯平藝文會が選ばれた。  

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