米国の原爆研究資料を調査へ 国、長崎の被爆体験者救済巡り

被爆体験者ら(奥)が県や長崎市の担当者に早期救済を求めた協議=長崎市役所

 国指定地域外で長崎原爆に遭い被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済を巡り、米原爆傷害調査委員会(ABCC)が長崎で実施したとされる残留放射線などの研究に関する資料を、国が本年度中に調査する。長崎県と長崎市は体験者の被爆者認定につながる客観的資料として調査を求めており、13日の体験者との協議で報告した。
 ABCCは放射線影響研究所(放影研)の前身。原爆投下後の長崎と広島で土壌や樹皮などの残留放射線を調べ、原爆の「黒い雨」など放射性降下物の分布図を作ったとされる。厚生労働省はこの研究結果に関する資料が、米国立公文書館と米科学アカデミー、米トルーマン大統領図書館の3カ所に所蔵されていないかを調べる。委託業者と先月契約を結んだ。
 長崎の黒い雨について、国は過去に「降雨の客観的記録がない」との判決が確定しているとして、黒い雨や灰に遭ったと訴える体験者の被爆者認定を否定。2月にABCC資料の調査を国に求めていた県と長崎市は「実際に降雨を示す分布図が出てくれば客観的資料となり、根本的解決につながる」と期待感を示した。
 一方、体験者が県市に被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の弁論準備手続きが13日、長崎地裁であり、来年2月19日の最終弁論で結審することが決まった。

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