バウンスを生かすには? 一周回って基本の構えを疑ってみる/ギアを愉しむ。

バウンスと友達になるための簡単な方法

アプローチでのボール位置、正解はどこ!?

現代のツアーウェッジの礎を築いた偉大なるウェッジデザイナー、ロジャー・クリーブランドとボブ・ボーケイ。ロジャー氏は80年代にクリーブランド『ツアーアクション 588』を完成させ、ティアドロップと呼ばれるツアーウェッジの代表的フェース形状を創出。ボーケイ氏はロフト角の組み合わせとソールのグラインドシステムを確立し、名立たるトッププレーヤーのショートゲームに大きな影響を与えた。

このウェッジデザインのカリスマ2人が、事あるごとに口にするキーワードが“Bounce is your friend(バウンスは友達)”。ゴルフ歴の長いゴルファーなら一度は耳にしたことがあるフレーズだろう。

シャフトを垂直にした状態で、リーディングエッジとソールの間にできる角度をバウンス角と呼ぶ

ウェッジにバウンス角が付いていることで、リーディングエッジ(フェース最下部の刃)よりもトレーリングエッジ(ソールとバックフェースとの縁)側が高くなり、ボールにコンタクトする前にソール後方が地面に接地する。地面深くに潜る角度で下りてきたヘッドを、振り抜き方向へと進路変更させてロフト角通りのスクエアインパクトに導くのがバウンス。スクエアインパクトとは、バックスピンを適正化するために最も重要な基準の状態といえる

では、どうすればバウンス角を効果的に生かせるのか? カリスマ2人が説くように、バウンスと友達になるにはどうすれば良いのか?

答えは意外に簡単。ハンドファーストの構えをやめることだ。

ボールがスタンスのセンターにあるハンドファーストな構え

ウェッジショットでのボール位置を、スタンスのセンター(真ん中)と認識している方は多い。結果としてハンドファースト気味の構えになる。とにかくシャフトを目標方向に傾けて構えているアマチュアゴルファーは多いが、フェースを立たせて構えることで、せっかくのバウンス角はゼロになってしまう。つまり構えた時点で、ヘッドを地面に刺さりやすくしている。自らウェッジが持つ機能を奪っているといっても過言ではない。

スタンスの真ん中にセットするのはボールではなく「ヘッド」

では、どうすればバウンス角を生かすことができるのか? スタンスの真ん中にセットするのは、ボールではなくヘッドが正解。シャフトも目標に傾けず、真っすぐ見えていればOKだ。ボール位置は自然と左足方向に1個分ズレて、バウンスを生かすことができる。これが“ウェッジの基本アドレス”なのだ。

シャフトを真っすぐにしてウェッジを構えると、「リーディングエッジが浮いてトップしそう」と懸念を抱くゴルファーも多いだろうが、それはフローリングや人工マットの上で構えているから。実際のコースでは、ボールは芝生の上に乗って浮いている。シャフトを真っすぐにして構えたところで、リーディングエッジが浮いているようには見えない。ここが大きなポイントである。

ヘッドをスタンスの真ん中にセット。ボールはそのぶん左足寄りに

ヘッドをスタンスの真ん中にセットし、シャフトを垂直にして構える――。ボールはやや左足寄りになるが、これがバウンスを適正に生かすための最適なボール位置。これより右足方向にボールをセットした場合は、バウンス効果はどんどん消えてしまうと考えるべきだ。ボールを低く打ち出したいなら、ロフト角の立った番手に持ち替え、ボール位置は左足寄りのまま打てばいい。そのほうがシンプルに低く打ち出せる。

正しく構えることができれば、打ち方の技術を上げなくてもバウンスと友達になれる。ウェッジとはそもそも、そのように作られた素晴らしい発明品なのだから。(高梨祥明)

ウェッジのバウンス角から基本アドレスを見直す

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