識者「1票の重みの問題」 小山市議選当選無効裁決 全国でも結果覆るケース相次ぐ

小山市役所

 「1票差」となった小山市議選結果を巡る問題では、市、県の選挙管理委員会の無効票に対する判断が割れた。全国でも僅差の選挙では、再点検によって選挙結果が覆るケースが相次ぐ。識者は「1票の重みや効力を巡る極めて重い問題」と指摘する。

 「慎重かつ厳正に調査・審理を行った」。県選管が13日に公表した裁決書では、再点検のため抽出した16票の有効、無効の判断理由を公職選挙法や判例を用いて8ページにわたって説明した。

 県選管は、市選管が最下位当選者の有効票と判断した2票を「他事記載」で無効票と判断。次点候補者の得票数が上回る結果となった。裁決には法的拘束力があり、30日以内に提訴がなければ確定することになる。

 同様の事案は全国的にある。小山市議選と同じ4月23日に行われた東京都中野区議選でも、8月に都選管が最下位当選者の当選を無効と裁決。審査を申し立てた0.415票差の次点候補が上回り、現在係争中だ。

 昨年10月の沖縄県うるま市議選では県選管の再点検の結果、2票差で落選した候補者の得票が4票増え、選挙結果が覆った。票の紛れ込みや、名字に誤記がある票が有効になったことが理由という。当選無効と裁決された候補者が高裁に提訴したが棄却され、最高裁に上告中。

 2021年3月の三重県伊賀市議選は3票差だったが、県選管が再点検した結果、最下位当選者と次点候補の得票が同数となり、最下位当選者の当選が無効と裁決された。訴訟でも同数は変わらず、公選法に基づきくじ引きで当選者を決めた。確定するまで1年余りに及んだ。

 宇都宮大地域デザイン科学部の中村祐司(なかむらゆうじ)教授(政治学)は「市、県の選管で同じ結論が出るよう、基準のすり合わせなどを検討するべきだ。無効票を減らす仕組みづくりも必要」と指摘。有権者に対しても「貴重な1票を行使するので適切に書くことが大切だ」と話している。

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