犬の『QOL』って何か知ってる? 愛犬の幸せ度を高めるためにできる2つのこと

犬の「QOL」とは

人間の医療や介護の世界で近年よく使われる言葉に「QOL(Quality of Life)」というものがあります。これは「生活の質」「生命の質」などと日本語で訳されており、生きていくうえでの生きがいや満足度をあらわす指標のひとつとなります。

QOLの概念は、遠い昔のギリシャの哲学者、ソクラテスの「なにより大切にするべきは、ただ生きることではなくよりよく生きることである」といったとても哲学的な思想にまでさかのぼります。現代においては物質的に豊かになったため、「質の良さ」を生活の豊かさの基準にしようという気運が高まっています。

つまりQOLとは、私たちが生活する上で「物質的な豊かさ」ではなく、心の豊かさや充実感に焦点をあてた満足度を表す考え方となります。そのため、個人の主観によって満足度は大きく異なることになります。

人間の場合は、WHOが国際的にQOLを評価する基準を作っています。

この基準は「身体的領域」「心理的領域」「自立のレベル」「社会的関係」「生活環境」「精神性/宗教/信念」の6つの区分に分かれていて、過去2年間の生活を振り返り満足度を5段階評価で回答、採点して個人の生活の質を測定します。この点数が高ければ、「満足度が高い=QOLが高い」ということになるのです。

そしてこの「QOL」という考え方は、人間だけでなく、この数年で犬をはじめとする動物たちにも当てはめることが進んでいます。さらにペットだけにとどまらず、牛や豚というような産業動物に対してもQOLを重視した飼育方法を考えよう、という動きが盛んになりつつあります。

犬にとっての「よりよい生活」としてQOLの基準となるのが、動物福祉の基本理念として掲げられている「飢え・渇きからの自由」「不快からの自由」「苦痛・障害・病気からの自由」「恐怖・抑圧からの自由」「正常な行動をする自由」からなる5つの自由です。

この5つの項目は2012年から動物愛護法にも組み込まれており、犬のQOLについてはこの5つの自由をどれだけ満たされているかが評価の基準となると考えられています。

食事や水に不自由なく、病気の心配がない生活を送れること、習性に応じた刺激や運動を得られること、生活環境に応じた社会性を身につけることを通じて、「犬が犬らしく生きられる」「本能を満たせる」ことが犬のQOLを高めると言われています。そのために飼い主は犬の習性をよく学び、彼らに応じた食事や運動、環境を与えることが大切です。

犬の「QOL」を高めるためにできること

ではここからは、犬の「QOL」を高めるために、飼い主としてができることについて解説します。飼い主としての一方通行の優しさではなく、愛犬の幸せ度を高めるために本当にすべきことはなにかを常に考えるように心掛けましょう。

本能・習性を満たす

犬の「QOL」を高めるためには、まずは彼らの習性や個性をしっかり理解することが大切です。

犬と人間は違う動物であり、快適さの感じ方には相違があります。人間にとって快適なことでも、犬にとっては不快であったり迷惑であったりすることもあれば、場合によっては害になることもあるのです。

例えば、犬は甘味を感じることができるので、甘い果物や人間のお菓子も好んで食べてしまいます。しかしいくら好きだからと言っても、ブドウやチョコレートのように、犬が食べると中毒を起こす食べ物を与えるわけにはいきません。

狩りをまねた遊びが好きな犬に、言うことを聞くからといってじっとお留守番をさせるようなことも、彼らの精神的な不調を招きます。

犬の健康に必要な栄養、運動を与えることはもちろんのこと、犬種や性格によって接し方を変えて彼らの本能を満たしてあげるようにしましょう。

特に犬は、人とコミュニケーションをとることが大好きです。食事だけ与えて放置ということはせず、彼らのペースに合わせて、遊びやふれあいなどでコミュニケーションをとってあげましょう。

快適な空間を保つ

犬は本来とても綺麗好きで、身体や寝床が糞尿で汚れることを嫌がる動物です。その理由は、衛生的な問題だけではなく、においによって外敵に存在を知られてしまう危険を避けるためと言われています。

そのため、犬のトイレや寝床は常に清潔に保ってあげることが、犬のQOLを高めるためには欠かせません。

また犬は汗腺によって体温調節することができないので、気温・室温の調整に気を使ってあげましょう。人間が快適と感じる気温では、被毛がある犬にとっては、やや暑い場合も多いようです。

まとめ

犬のQOLを高めるということは、犬が犬らしく生活できるように環境を整えてあげることにつながります。

快適に、心地よくすることはもちろんのこと、犬たちが喜ぶことは何かを飼い主さん自身がしっかり犬と向き合って考えてあげることが大切ですね。

(獣医師監修:平松育子)

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