宝塚歌劇団、俳優急死の調査報告書を公表 長時間労働、上級生指導で強い心理的負荷 通報窓口設置など7対策

劇団員の死亡を受け、謝罪する宝塚歌劇団の木場健之理事長(中央)、村上浩爾専務理事(右)、井塲睦之理事・制作部長(左)=14日午後、宝塚市栄町1、宝塚ホテル

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)は14日、宙(そら)組の団員俳優女性(当時25歳)が9月に急死した問題をめぐり宝塚市内で会見した。長時間の勤務や上級生からの指導の時期が重なり「精神障害を引き起こすような心理的負荷が故人にかかっていた可能性が否定できない」とする外部弁護士による調査チームの報告書を公表した。木場健之理事長は、劇団員の健康などへの安全配慮義務について「極めて不適切な部分があった」と責任を認めた。

 報告書では、亡くなる直前、女性には下級生をまとめる立場としての業務の負担や上級生からの指導が多数重なっていたと指摘。上級生から下級生への厳しい叱責や指導について「ハラスメントの温床にもなりかねない性質があることは否定できない」とした。

 女性は家族に対して「なんで怒られているかわからない」「叱られていることに何とも思わなくなってきた」などと述べていたという。

 同時に発表した歌劇団の改革案では、年間興行を9興行から8興行に減らすなど過密な公演スケジュールの解消や、自主稽古のあり方の改善、新人公演のあり方の見直しなどを挙げた。

 会見には歌劇団の木場理事長と村上浩爾専務理事、井場睦之理事・制作部長が出席。木場理事長は、女性の遺族に対し「大切な家族を守ることができなかったことを心よりおわび申し上げます」と謝罪した。

 また、木場理事長は12月1日付で理事長職を辞任することを発表。阪急電鉄の嶋田泰夫社長ら3人の減給処分も公表した。

 報告を受け、歌劇団は過密スケジュールの解消など7項目の対策を提示した。具体的には、年間9興行から8興行にし、1週間当たりの公演回数を10から9にする▽新人公演における出演者の負担軽減▽非効率・不適切な組ごとのルールの見直し▽劇団専用の外部通報窓口の設置▽阪急阪神ホールディングス(HD)や阪急電鉄の監査部門との連携-などを盛り込んだ。

 会見で、遺族の主張との隔たりを問われた木場理事長は「丁寧に説明をし、ご遺族の意向を聞きたい」と説明。今月25日に開幕が迫っている東京宝塚劇場での宙組公演については「団員にとって安全、安心な公演が実施できる見込みができたら再開したい」と述べるにとどめた。新理事長には専務理事の村上氏が就任する。

 女性は9月30日、宝塚市内のマンション敷地内で死亡しているのが見つかり、宝塚署は自殺の可能性が高いとみている。歌劇団は外部弁護士による調査チームを設置し、宙組団員60人以上を含む聞き取り調査を10月初旬から実施していた。

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