テレビ東京「バーチャルプロダクション宣言」。3DCG制作のD・A・G社と資本業務提携、WBSは来春からVP化

テレビ東京ホールディングス(HD)は、「仮想デジタル映像とリアル映像」を組み合わせて、コストを抑えながら多彩な映像表現を可能にする次世代の映像コンテンツ制作技術「バーチャルプロダクション(VP)」の本格導入を進めるという。

今回、最先端の3DCG(3次元CG)やゲーム開発などを手がけるD・A・G社に出資し、資本業務提携した。出資比率は2割で、テレビ東京HDから役員も派遣し、持分法適用会社となる。

来春から順次、自社スタジオをVP化し、まずは経済ニュース「WBS(ワールドビジネスサテライト)」「Newsモーニングサテライト」のVP制作がスタートするという。

2025年4月までに、テレビ東京の自社スタジオを使って制作する番組の6割にVPを導入していく方針だ。D・A・G社への出資を含め、VP関連への投資額は最大で17億円だという。

これにより、制作プロセスやスタジオ運用の効率化を実現するとともに、テレビ東京のコンテンツ制作力とD・A・G社の3DCG技術の相乗効果で、進化を続けるVPを使った魅力的な映像コンテンツを提供していくとしている。

バーチャルプロダクション(VP)とは、グリーンバックや大型LEDディスプレイを背景に使い、3DCG(3次元CG)などで作った仮想背景と、位置情報センサーを取り付けたカメラで撮影したリアルな映像を合成する最新技術だ。

テレビ東京が今年6月に放送した音楽番組「テレ東音楽祭」では、ステージの背景に巨大なLEDディスプレイを設置し、そこに3DCGで作った工場から立ち上る炎を映すことで、アーティストがその場所でリアルに演奏しているかのようなシーンを演出した。

背景のLEDディスプレイに炎の3DCG(2023年6月放送「テレ東音楽祭」)

同社は、2025年4月までに最大で17億円を投じて、経済ニュース「WBS」や「News モーニングサテライト」をはじめ、テレビ東京の自社スタジオで制作する番組の6割にVPを導入する。VPの活用は、これまでより映像表現が格段に自由になるだけでなく、効率化によるメリットも大きいとしている。

番組ごとのスタジオセット(背景の美術セットなど)の切り替え作業には、大道具・小道具を入れ替えたりするため数時間を要するが、VPでは背景の3DCGを切り替えるため、短時間でのセットチェンジが可能となる。これにより、スタジオの稼働率を大幅に引き上げ、その利用状況に応じて一部のスタジオを外部に貸し出すことも検討する。

この10月から、一部のレギュラー番組にVPを導入していく方針だ。例えば、3DCGで巨大なサッカースタジアムを作り、スタジオのリアルな人物と合成して、あたかもその場にいるような臨場感のある映像表現が可能になるとしている。

新番組「サタデーナイト J」のスタジオもVP(毎週土曜よる11時30分放送)

2023年3月にテレビ東京で放送したドラマ「ひとひらの初恋」は、全てのシーンの背景を大型LEDディスプレイを使ったVPで制作された。

「ひとひらの初恋」スタジオ撮影風景。机はリアル、壁と窓の景色は3DCG

第一話

テレビ東京グループは2023年度からの3カ年の中期経営計画において、成長のための合計200億円の投資枠を設けているという。最先端技術の活用によるコンテンツ制作力強化は成長力の大きな柱と考えており、今回のD・A・G社との資本業務提携は、成長投資戦略の一環と位置づけている。テレビ東京とD・A・G社は、VPに関する連動だけにとどまらず、今後はオリジナルIP(知的財産)の開発も進めていくとしている。

D・A・G社スタジオでのモーションCG制作風景

© 株式会社プロニュース