市川團十郎の襲名、アート炸裂な「祝幕」は村上隆が手がける

京都の風物詩「吉例顔見世興行」で襲名披露公演をおこなう、十一代目市川海老蔵改め、十三代目市川團十郎白猿。11月14日に、映画監督・三池崇史と、アーティスト・村上隆とともに、今回の公演のために設えられた「祝幕(いわいまく)」を、地方公演としては初めてお披露目した。

11月14日に「南座」(京都市東山区)でお披露目された祝幕

「祝幕」は、役者の襲名披露のときに作られる特別な幕。現在團十郎のドキュメンタリーを撮影中の三池が、タイトルのイラストを親交の深い村上に依頼したのが、今回のコラボのきっかけとなった。三池監督の「市川宗家のお家芸『歌舞伎十八番』の全演目を描いた役者絵」というアイディアから生まれた、幅4.8mの絵画をもとにした「作品」となっている。

祝幕のお披露目イベントに出席した(左から)三池崇史、市川團十郎、村上隆(14日・京都市内)

『助六』『勧進帳』などのキャラクターが、村上らしいカラフルな色彩&大胆な構図で描かれた祝幕。三池が「下絵ともいえないようなこちらのイメージ画を、村上さんに完全なアートとして表現していただきました」と振り返ると、村上も「ロートレックやドガなどの印象派の人々も、よく舞台上の演者を描かれている。團十郎さんの絵を描くご縁をいただけて、ラッキーだと思います」と感謝を述べた。

祝幕のお披露目イベントに出席した市川團十郎(14日・京都市内)

團十郎は「感覚だけでダーン! と描いているように見えて、実は緻密な計算で描かれている。それはドーンと演るけど、実は考えながら表現していく(歌舞伎の)荒事に通じていて、その基本理念まで汲み取って作品にしていただきました」と感激しながら語り「南座がお芝居のみならず、最先端の現代アートも見られる特別な空間になっていることを感じながら、舞台に楽しく立てるように努力したいと思います」と、顔見世の意気込みを語った。

「當る辰歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」は、12月1日~24日に「京都南座」(京都市東山区)で上演。チケットは1等席2万5000円、2等席A1万2000円ほかで、現在発売中(一部完売の回あり)。またこの作品の原画は、2024年2月3日~9月1日に「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)で開催される展覧会「村上隆 もののけ 京都」で展示される予定。

取材・文・写真/吉永美和子

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