日本の世界遺産【15】独自に進化した多様な生態系が見られる東京都「小笠原諸島」

東京都心から南に約1,000kmの場所にある「小笠原諸島」。東京竹芝桟橋から父島まで定期船「おがさわら丸」で約24時間かかりますが、年間約3万人もの観光客が訪れる人気の観光地です。今回は、美しい海と独特で多様な生態系が魅力の「小笠原諸島」をクローズアップ。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

固有種が多数! 独自に進化した動植物が生息する「小笠原諸島」

1830年まで定住者はおらず、「無人島(ボニン・アイランド)」と呼ばれていた小笠原諸島は、“ボニンブルー”と呼ばれる紺碧の海と、切り立った断崖に囲まれた大小30ほどの島々からなります。

そんな海に隔てられた小笠原諸島では、独自の進化を遂げた動植物と、その多様な生態系が見られます。固有のカタマイマイの仲間や、ムニンノボタン、オガサワラトンボなどが生息していたり、父島や兄島には「乾性低木林」と呼ばれる背の低い林が広がっていたりします。同諸島に自生する維管束植物全体の約40%、昆虫は全体の約25%、カタツムリは90%以上が固有種なのです。

南島の半分化石の貝殻「ヒロベソカタマイマイ」

小笠原諸島の生物の進化は現在進行形。なかでもカタツムリや植物は、環境に合わせて形態を変化させ、種分化を繰り返してきました。この進化のプロセスのことを「適応放散」といいます。固有種のオガサワラカワニナは、生息する場を沿岸域から汽水域、純淡水域へ広げてきたと考えられています。

このような小さな海洋島における生物進化の価値が認められ、聟(むこ)島列島、父島列島、母島列島、北硫黄島、南硫黄島、西之島のほか、父島、母島の集落を除いた区域と周辺の海域の一部が2011年に世界自然遺産に登録されました。

小笠原諸島の見どころは?

※画像は父島の景色です

小笠原諸島の玄関口にあたる「父島」にある「旭山」は、一度は登りたい山です。標高267mで頂上まで遊歩道が整備されており、初心者でも気軽に登山ができます。途中で、標高272mの旭山南峰の頂上へ向かう遊歩道と分岐していますが、どちらの山頂からの眺望も絶景です。兄島、二見漁港、二見湾、扇浦、南島などを見渡すことができますよ。小笠原を代表する乾性低木林の一種「アカテツ」も見られる可能性大。

※画像は乳房山からの景色です。

また、日本で一番遠い島といわれる「母島」の「小富士」も忘れずに訪れたい場所。なんと登山をしながら3つ(ワイビーチ・南崎・蓬莱根)のビーチに立ち寄ることができ、美しいビーチと山の両方を堪能できるのです。なだらかな亜熱帯の森を歩きながら、島固有の動植物を観察できるのも大きな魅力。さらに頂上からはボニンブルーの海とテーブル珊瑚に彩られた南崎の景色を眼下に望めます。

また、この一帯は旧日本軍の基地があり、今でもトーチカや塹壕が残っていて、日本の歴史を感じられるスポットにもなっていますよ。

小笠原を訪れたら、外せないのが「南島」の「扇池」です。無人の南島は「沈水カルスト地形」という石灰岩特有の特殊な地形が特徴的で、「ドリーネ」という窪地や「ラピエ」という鋭くとがった岩が見られます。

そんな南島で最も人気なのが扇池なのです。白いビーチと透き通った海のコントラストが眩しく、ここでの海水浴は格別! ウミガメの産卵シーズンには、カメの足跡が見られたり、天然記念物であるヒロベソカタマイマイの半分化石の貝殻を観察できます。

なお、南島へは個人では上陸できません。貴重な動植物を守るため、腕章を着用した東京都自然ガイドと一緒に上陸する必要があります。ほかにも注意点がいくつかありますので、詳しくはこちらをご覧ください。

旭山(父島)・小富士(母島)・扇池(南島)への行き方

今回、見どころとしてご紹介した3カ所への行き方は下記の通りです。なお、父島へは、東京竹芝桟橋から定期船「おがさわら丸」に乗船して24時間、「母島」へは父島から「ははじま丸」に乗り換えて2時間です。

旭山

B-しっぷ(商工観光会館)から車で約11分+徒歩約30分

旭山

住所:東京都小笠原村父島旭山

公式サイト:https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/ogasawara/spot/

小富士

沖港から車で約12分+徒歩約60分

小富士

住所:東京都小笠原村母島南崎

公式サイト:https://www.tokyo-islands.com/island/440/

扇池

ツアーの内容や、ボート、カヤックなどアクセス方法により異なります。

扇池

住所:東京都小笠原村

公式サイト:https://www.ogasawaramura.com/about/minami-haha/

体験プログラムも充実! カメの飼育水槽が見学できる「小笠原海洋センター」

©小笠原村観光局

入場料無料の「小笠原海洋センター」は、ウミガメをはじめとした海洋生物について学べるスポットです。

ここには「展示館エリア」と「飼育エリア」の2つがあり、 展示館エリアには小笠原の歴史やウミガメの生態と進化、ザトウクジラの生態などが、わかりやすく写真とパネルで展示されています。一方の飼育エリアでは、250~300頭の子ガメのほか、アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイも飼育していて、観察できますよ。

また、「ウミガメと記念撮影」「エサやり体験」「ウミガメ教室」といった体験プログラムも開催中です。予約受付中のプログラムについてはこちらをご覧ください。

©小笠原村観光局

小笠原の郷土料理といえば「島寿司」です。醤油やみりんで漬けたサワラを握ったお寿司で、カラシがついているのがポイント。これが甘めの酢飯とよく合います。ぜひ味わってみてくださいね。

小笠原海洋センター

住所:東京都小笠原村父島字屏風谷

電話:04998-2-2830

営業時間:展示館は9:00~16:00(12:00~13:30は閉館)、入港日は13:30~16:00、出港日は9:00~12:00のみの開館

定休日:船が入港しない日

入場料:無料

交通アクセス:二見港の船待ちから徒歩約30分、自転車で約10分、車で約5分

公式サイト:https://bonin-ocean.net/

[参考]

小笠原村観光協会

小笠原村観光局

環境省_日本の世界自然遺産

小笠原母島観光協会

東京都観光局

東京諸島観光連携推進協議会

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