犬の去勢・避妊の必要性は?知っておくべきメリットとデメリット 「飼い主は理解しておくべき」「しっかり考えないと」

犬の去勢・避妊のメリット

まず最初に、犬の去勢・避妊のメリットについて学んでおきましょう。

生殖器の病気リスクが下がる

犬の去勢手術では精巣を、避妊手術では子宮と卵巣を摘出します。それらを物理的に取り除くため、それらの生殖器に関わる病気を予防することができるのです。

具体的には精巣腫瘍や前立腺肥大症、子宮蓄膿症、子宮内膜炎、乳腺腫瘍などの病気にかからなくなります。これらは加齢とともに発症する割合が増えるため、体力が低下した老犬になったときにかかる可能性のある病気を減らせることは大きなメリットでしょう。

ちなみに、犬の乳腺腫瘍の発生率は、初回の発情前に避妊手術をおこなった場合は0.05%まで下がります。しかし、『2度目の発情前に手術した場合は発生率が8%になる』というデータもあるため、疾病予防を重視して避妊手術をおこなう場合は、手術のタイミングもきちんと考えるようにしましょう。

オスはマーキングや気の荒さが低下する可能性がある

オス犬の去勢手術をおこなうと、男性ホルモンが低下するため、それに影響を受けているマーキング行動や気性の荒さが目立たなくなることもあります。

もちろん、マーキングや攻撃性はホルモンの影響によるものとは限らないので、問題が必ずしも解決されるわけではありません。

しかし、オス犬同士での喧嘩などが多い場合は、トラブルが減る可能性も十分考えられます。

メスは生理のストレスや偽妊娠がなくなる

犬の生理は年に1~2回で、個体差はあるものの期間は2週間程度とされています。この時期は、女性ホルモンの大きな変動があることから、心身ともに様々な変化が見られます。

人間と同様に出血があるため、オムツやナプキンを用意する必要があります。犬の場合、出血を気にして舐め続けることで陰部が炎症を起こすこともあるので、注意が必要です。

また、生理中は頻尿や食欲低下、元気消失などが見られることも少なくありません。犬によっては気が立っていて、普段はしないような攻撃的な態度を見せることもあるようです。

また、発情を迎える犬は、偽妊娠をすることもあります。自分が妊娠していると勘違いして、妊娠中のような行動を取るようになるものですが、これにより大きな負担やストレスがかかります。

意図しない繁殖を防げる

愛犬の健康や体に直接影響することではないかもしれませんが、去勢・避妊手術をすることで望まない、または意図しない妊娠を防ぐことも大きな意味を持っています。

外飼いをしている家庭や多頭飼いしている家庭では、意図せず妊娠してしまったということも少なくありません。飼い主さんは気をつけていても、発情期の動物は予想を上回る行動をするため、そのようなことが起こってしまうのです。

もちろん、生まれた子犬をすべてきちんと飼育できれば問題ありません。しかしなかには子犬を育てる余裕がなかったり、子犬の引き受け先を見つけられなかったり等で、保健所に処分を依頼する事例もあります。

そのような不幸な犬を増やさないために、意図しない妊娠は絶対に防がなければなりません。

また、今すでに家族を待っている保護犬も数多くいます。新しい命の誕生も素敵なことですが、今ある命を救うこともとても素晴らしいことだと思います。

犬の去勢・避妊のデメリット

では次に、犬の去勢・避妊のデメリットについても学んでおきましょう。メリット・デメリットの両方をきちんと把握した上で、飼い主として然るべき判断ができるように備えておくことが大切です。

手術でのトラブルが起こる可能性がある

犬の去勢・避妊手術は、それほどむずかしいものではないとされています。去勢手術は10~20分、避妊手術は30~60分程度で終わり、基本的に当日に帰宅できます。

しかしながら、全身麻酔をかけて切開・縫合をおこなう手術のため、リスクがないわけではありません。

頻繁に起こることではありませんが、麻酔にアレルギー反応を起こしたり、目覚めずに死亡してしまったりする事故もあります。

また、手術後に縫合糸が体質に合わず傷口が炎症を起こしたり、尿道括約筋の働きが弱まって尿失禁をしやすくなったりすることもあるのです。

太りやすくなる

『去勢・避妊手術をおこなった犬は、太りやすくなる』と言われることがあります。しかし、手術をすると必ず太るというわけではなく、術前・術後で同じ生活を続けていると太りやすいということを覚えておきましょう。

去勢・避妊手術をすると、繁殖に必要な性ホルモンが低下して代謝が下がり、1日に必要なカロリーが術前の8割前後になります。 そのため、手術後も手術前と同じ運動量・食事量だとカロリーが過多となり太ってしまうということです。

まとめ

犬の去勢・避妊手術には、メリットもデメリットもあります。必ずしなければならないものではありませんが、愛犬におこなうべきかどうかは必ず考える必要があります。

愛犬の心身や飼い主さんの生活、日本の犬事情など様々なことに影響を与えるため、できれば犬を飼い始める前にしっかりと考えておくといいでしょう。

(獣医師監修:寺脇寛子)

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