有権者が選挙報道で見たいものとは?(データアナリスト 渡邊 秀成)

本年(2023年)4月に第20回統一地方選挙が執行されました。選挙前にはあれほど報道されていた各政党の政治方針等が、統一地方選挙後には報道がなされなくなりました。そして選挙から7ヶ月ほど経過した現在では統一地方選挙があったのかどうかを忘れてしまうくらいに地方政治に関する報道も減少しています。11月に入った今現在から、当時の選挙報道を振り返るとテレビ、新聞、ネットメディア等が各政党の演説風景を収録しYouTubeで流し、各地域で何分程度演説したのか、その演説内でどのような単語を何回発言をしたのか?そしてワードクラウドで表現して、政党ごとの演説の特徴を特集しました。

また、各政党の党首がSNS上でどのような発言をし、どのような単語がどの時期に何回出現をし、その投稿がどの程度情報拡散したのであるか?SNS上のフォロワー数、RT回数、投稿回数、動画再生回数等で、政党ごとのネット影響力等を比較をするといった内容も報道されました。

特にSNS上の情報は数値化されたものが多いため、グラフ作成等で可視化することで政党ごとの比較がしやすく、各党のこれまでの政策実現度を検証するといった内容よりも、比較的低コストで視聴者等の耳目を集めやすいといった特徴があるように思います。または政党の党首、候補者にこれからどのような地方自治を目指すのか?そして選挙戦略についてどのようなことを考えているのか?といった内容が流れました。

これらの報道等の多くは、選挙戦略やこれから政党、各候補者がどのように政治をしていきたいのか?といった、将来についての内容です。

その一方で前回選挙から今回の統一地方選挙までの間の、各政党の政策達成度等についての比較検証サイトは、ネットメディア、マスメディア等を含め、目にしなかったように思います。

公約の実現度を示して、有権者に近い情報の発信を

有権者が投票する際に参考とする情報として、マスメディア報道をあげる人の割合が多いことは各種調査結果で明らかになっています。

であるならば、この選挙になるまでの間の各政党の公約がどの程度実現できたのか?をきちんと確認してみるといったことが、有権者の投票先を決める際に最も重要な報道内容となるはずです。

選挙期間中は、とにかく選挙に当選するためにさまざまな公約を政党、候補者はしてきますが、それら公約が実際に将来的になされるかどうかは未知数です。

しかし、過去の選挙時に公約した内容が実現してきたかどうかは、検証することは可能です。今まで公約を実現してきたところは、今後も公約を実現する可能性は高いと思われますし、公約したことが実現できてきていないところは、今後も公約実現をする可能性は低いと考えるのが普通です。

ですので、各政党、候補者が前回の選挙公約時に公表した内容がどの程度実現できたのかどうかを、一覧表にして並べてみると有権者が投票する際に参考になる情報ではないでしょうか。

そのためには選挙公約等は永年保存をして、各公約が実現できているのかどうかを、きちんと観察した報道が必要となります。

過去の新聞縮刷版等を見ても、選挙が始まる前は、盛んに各政党の選挙対策、地元の情勢報道等が記されていることがわかります。しかし、実際に選挙公約された内容が実現されたのかどうか?住民生活がどのように変化したのか?についての報道はあまり見ることはありません。

個々人のネット接続時間が長くなっている現状を考えると、SNS上での有権者等に対する影響力等も大切な情報であることは間違いありません。ただそれら情報は政党や候補者にとっては大切かもしれませんが、選挙結果から影響を受ける住民生活からは遠く離れた情報になります。

選挙結果次第で住民、国民生活にどのような影響が出てくることが考えられるのか?各地域が住みやすくなるかどうか?といった個人の生活から考えた報道等が増えると有権者はより選挙を身近に感じ、投票所に足を向ける可能性が高まりそうなのですが、そのような報道、ネットメディア記事を見かけなかったような気がします。

ボートマッチにも公約達成度を入れるべき

また各社が提供する【vote match】サービスには、各政党の過去の政策実現度といった内容に触れていないものが大半だと思います。公約していることが、実際に実現できているかどうかは、有権者にとって一番重要な情報です。

有権者が知りたいのは、自身の生活がどのように変化していくのか?選挙公約が実現できた党はどこであったのか?を政党や候補者自身の言葉ではなく、報道機関等第三者の外部から判断した情報だと思われます。

占いと同じで、人は将来に対することには関心がありますが、過ぎ去ったことの検証はないがしろにする傾向があります。とにかく検証は面倒ですし、時間がかかる面倒なことは多くの人はやりたがりません。しかし、個々人のネット接続時間が長くなっている現在、報道等、ネットメディアの役割は過去の公約を検証する部分にあるのではないでしょうか?

前回選挙から今回の選挙までの政党ごと、現職候補者ごとの、政策実現度のチェックサイト等があれば、有権者は投票先を決定する際の判断がしやすくなるのではないでしょうか?

今回は選挙報道で有権者が見たいものについて考えてみました。

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