「私はなんでこうなの?」トランスジェンダーの子の自分探しの物語『ミツバチと私』予告編

第73回ベルリン国際映画祭にて、主演ソフィア・オテロが史上最年少の8歳で主演俳優賞を受賞したスペイン映画『ミツバチと私』が、2024年1月5日より公開される。このほど、予告編が披露された。

本作は、第73回ベルリン国際映画祭にて主演ソフィア・オテロの驚くほど自然な演技が評価され、史上最年少の8歳にして最優秀主演俳優賞受賞を成し遂げた注目作。ベルリン国際映画祭は、2020年に男優賞・女優賞が廃止。性別区分のない主演俳優賞、助演俳優賞が新設され、まさにそれを体現する形での受賞となった。ソフィア・オテロは、約500人の中からオーディションで選ばれた新人で、今回が映画初出演となり、子供が抱える不安や心の機微を繊細に演じる様子は、『ミツバチのささやき』のアナ・トレントを想起させる。

先に開催された第36回東京国際映画祭では、ワールド・フォーカス部門でも仮題『20000種のハチ』として上映され、観客からは「傑作」「涙が止まらなかった」「主演の子の演技が素晴らしい」といった声が多くあがり、連続で満席となった。さらに、今年度新設されたアワード「エシカル・フィルム賞」の第一回受賞作品に選ばれた。エシカルとは人・社会・環境を思いやる考え方や行動のことを意味する。近年ではSDGsに積極的に取り組む企業が増えたことでエシカルの認知度が高まり、エシカルに沿った意識行動がSDGsの目標達成には必要不可欠とされている。本賞は、世界でも注目されるエシカルに特化した部門で、ジェンダー平等、環境、貧困、多様性、差別といった現代の重要な社会テーマに向き合った作品が対象となる。審査委員でエシカルディレクターの坂口真生は選考理由を「一言で言えば優しさ。この映画に出ていたすべての人がすべての人に優しい思いやりを持った一面が見てとれた」と語っている。

予告編は、主人公のアイトールが「私はなんでこうなの?」とつぶやくシーンから始まる。男の子に生まれたアイトールは、名前や髪型や水着、日々の様々なことに違和感を覚え、自分のことがわからない不安を募らせていく。そんなアイトールに戸惑いを隠せない家族。スペイン・バスク地方の柔らかな光が差し込む緑豊かな美しい自然を背景に、家族に寄り添われながら、私らしく生きていきたいと顔を上げる繊細な表情が映し出されていく。

場面写真は、養蜂用の防護服に身を包んだアイトールの姿や、休暇でバスクへ向かう車の後部座席で並ぶ兄弟3人、叔母と植物を植えていたアイトールがハチに驚いて顔を顰める場面、ドレスを着たアイトールと母親が鏡を見つめるシーンのほか、池で水着を交換したアイトールと友達の2ショットのカットなどが収められている。

■エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン(監督) コメント
日本で私の映画を上映していただけてとても幸せです。皆様にこの映画を観ていただきたい理由はいくつかあります。ひとつは、子供のトランスジェンダーというとても重要なテーマを扱っているからです。しかし、それだけではありません。家族の問題も含まれていますし、私たちは時々、自分はいったい誰なのだろうと自問することがあります。それは、自分自身を取り巻く人々が自分をどのように見ているかにも関係します。この映画は、光に満ちていて繊細で優しく感動的です。主人公のソフィア・オテロだけではなく、母親や祖母、叔母役の俳優たちも素晴らしい演技をしています。また、この映画を見て私の生まれ故郷であるバスクを発見してほしいと思います。バスク語という言語、そしてバスクの風景をです。映画館で皆様を待っています。

『ミツバチと私』
2024年1月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
出演:ソフィア・オテロ パトリシア・ロペス・アルナイス アネ・ガバライン
配給:アンプラグド

【ストーリー】 夏のバカンスでフランスからスペインにやってきた家族。8歳のアイトールは、自分の性自認が分からず、違和感と居心地の悪さに悩み、心を閉ざしていた。母はそんなアイトールを愛しながらも向き合い方に迷っている。ある日、叔母が営んでいる養蜂場でミツバチの生態を知ったアイトールは、ハチや自然と触れ合うことで心をほどき、多様性を受け入れ、ありのままで生きていきたいという思いを強くしていく…。

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