スターダム・ワンダー王者MIRAI、安納サオリとのV3防衛戦へ「熱い感情をぶつけ合う」低い支持指摘も受け止める

スターダムの「白いベルト」ワンダー・オブ・スターダム王者のMIRAI(23)が18日、エディオンアリーナ大阪(大阪市浪速区)で開催される「STARDOM GOLD RUSH 2023 ~しらんけどスターダム~」で〝絶対不屈彼女〟安納サオリと3度目の防衛戦に臨む。挑戦者からの〝口撃〟にタジタジとなるなど、揺さぶりをかけられた王者。その胸中を聞いた。

安納から「素朴な質問していい?」と切り出された。「バカにしているんじゃなくて、なんでMIRAIってそんなに支持がないの?カワイイし、愛されているし、強いし。でもなんで白いベルトの王者として支持がないの?」。MIRAIは安納が退出するまで言い返せず、厳しい表情で「絶対に防衛します!」としか言えなかった。1日の会見。王者は先制を許した格好になった。

MIRAIは7・2横浜武道館大会で中野たむを破り奪冠。9・3広島大会で小波から、10・9愛知大会で渡辺桃を相手に防衛を重ねた。しかし安納の指摘は、悔しいながら自覚する部分とも重なっていた。

MIRAIは「ベルトを取った時に『私を見てではなくて、スターダムを見て』という形にしたいと言ったんですけど、それはまだ難しいのかなと思います。私は中野たむが持つワンダーのベルトが欲しかった。だけどこれまでの挑戦者、挑戦したいと言ってくれた人は、MIRAIは関係なく白いベルトが欲しい、ベルトではなくMIRAIをぶっつぶしたい、と言っていて『白いベルトを持っているMIRAI』ではなかった。私とベルトがつながっていないようで、求めているところには届いていない」と冷静に振り返った。

その一因には発信力の低さを挙げた。「自分は試合に重きを置いているけど、試合以外のSNSなどを求められると、私はあまり得意ではない。自撮りも苦手です」と弱気になった。一方で全てを発信することには抵抗感も抱く。「想像して楽しむ部分も必要だと思っています。新しいファンが生まれるきっかけに発信は大切だけど、自分の気持ち、試合の内容を全部伝えるのは違う」。大相撲の元横綱・稀勢の里(現二所ノ関親方)が現役時代に発した有名な信念とも重なる。ファンに想像の余地を残すことに価値を抱く。

所属するGod’s Eyeのリーダーである朱里は「普段のふとした表情、試合後の様子に悩んでいるな、とは思います」とMIRAIについて語る。団体最高峰の「赤いベルト」ワールド王座をはじめ、数々の戦績を重ねてきた。自身の経験を踏まえ「悩みながら乗り越えることで、人としてもチャンピオンとしても成長するから、悩むことはMIRAIにとってすごくいいこと。悩みまくって自分の信じる道を見つけて突き進んでいけばいい」と心配はしていない。

朱里がワールド王者時代の22年1月、スターダム参戦間もないMIRAIがいきなり挑戦を求め、選手権が実現したことが印象に残る。「挑戦したいとすぐに来たんですよ。それにまずびっくりしたというか、本当に輝きたい、爪痕を残したい気持ちをすごく感じました。練習も真面目で負けず嫌い」と信頼を寄せる。「リングを降りると普段のゆったりした話し方とかすごくかわいい。最近ではビビンバを食べる姿が本当にかわいかった」と、愛される人柄についても明かした。

王者として悩みを抱きながら進んできたMIRAIだが、手応えを感じる部分もある。「ベルトを持ってから、以前より余裕を持って戦えている。リングでお客さんの声援が聞こえるようになりました。つらい時に周りが聞こえないとずっと一人で戦っている感じだけど、声援が聞こえると頑張れる」とプラスの面を口にした。

岩手県宮古市出身。小学生の時に東日本大震災で被災した。復興チャリティーの格闘技とプロレスの合同イベントを観戦したことがきっかけで、プロレスラーになることを決意した。「みんなで戦いたい、と常に考えています。最初にプロレスを見た時、リング上だけでなく、お客さんと一緒にみんなで戦っているようだった。それでプロレスが好きになったんです。だから試合が終わって、お客さんに『あの技すごかったね』『あの選手カッコ良かったね』ではなくて『弱くても何度も立ち上がって、私も頑張ろうかな』と思われるレスラーになりたい」。感心されるよりも関心を持たれ、共感を呼ぶプロレスが理想。試合中に声援を聞き取れるようになったことは、大きな力になるはずだ。

白いベルトを「感情の部分が大きい」と捉えるMIRAI。V3戦に向けて「安納はクールなイメージがあるけど、〝絶対不屈彼女〟と言うからには、クールさの中に何かがあるはず。クールな部分を引っぺがして、熱い感情をぶつけ合って防衛したい」と闘志を燃やしていた。

会見を行ったワンダー王者のMIRAI(左)と挑戦者の安納サオリ=都内

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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