デザフェス「糸引きマフィン」で健康被害も… 「損害賠償請求」が“現実的な解決策”とならないワケ

マフィンを販売していた店舗はSNSでその後の状況などを報告している(同店のインスタグラム〈@honey.honey.xoxo〉より)

11月11日~12日に東京ビッグサイトで開催されたイベント「デザインフェスタvol.58」において、とある出展店舗で販売されていたマフィンが「糸を引いていた」「納豆みたいな匂いがした」との報告が相次ぎ、騒動となっている。

体調不良を訴える人もいたことを受け、イベント運営者は14日に公式サイトを更新し、「フードエリア出展者の販売した飲食物を召し上がられた方から、体調不良が発生する事態となりました」「お騒がせして、大変に申し訳ございません」と謝罪した。

店側に「損害賠償請求」可能だが…

飲食店で購入した食べ物によって健康被害を生じた場合、製造・販売した店に損害賠償請求することは可能なのだろうか。消費者被害に詳しい野村茂雄弁護士は「腐った商品を販売して、それによって健康被害を生じさせたというのは不法行為にあたるので、損害賠償請求は可能です」と言う。

損害賠償請求をするにあたっては、商品を購入したレシート、商品が傷んでいたことを示す写真、病院の診断書などが必要だが、一時的におなかを下したくらいの健康被害であれば「慰謝料はせいぜい数万円、十数万円だろうと思います。結果的に訴えた側が赤字になる可能性が高いです」と野村弁護士は話す。

なお、「デザインフェスタvol.58」公式サイトによれば、今回の出展店舗はすべて「生産物賠償責任保険」に加入していたとのこと。

「生産物賠償責任保険は、製造・販売した商品によって他人が健康被害などを生じた場合に、その賠償金などを補償するものです。交通事故の任意保険をイメージしていただければ分かりやすいかと思います。

今回のデザインフェスタにおける事案では、おそらくこの保険から被害者への補償を行っていくのではないでしょうか」(野村弁護士)

運営側の責任は?

一連の騒動をめぐっては、イベント運営者にも「衛生管理のずさんな店に出展許可を出した」との批判が一部で向けられている。

「公式サイトを見る限り、運営側は条件を満たした店舗に対して必要書類の提出などの手続きを踏んで出展許可を出しているので、責任追及できるかと言えば、ちょっと難しいのではないかなと思います。

これが、もし腐った食品を販売していることを把握していたり、各店舗の運営管理の仕方にまで指示を出して、それが原因で食中毒が出たということであれば、話は別になります」(野村弁護士)

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