駄菓子屋、大人も心安らぐ「居場所」に 懐かしのお菓子だけじゃない! 料理教室など企画 兵庫・西宮

スタッフと会話しながら、駄菓子を選ぶ子どもたち=西宮市南昭和町

 老若男女が集う地域交流の拠点として、駄菓子屋がクローズアップされている。阪急電鉄西宮北口駅近くに今夏、NPO法人が運営する常設店「お茶の間 ぷちだがしやさん」=兵庫県西宮市南昭和町=がオープンした。子どもがお菓子を買う「昔懐かしい場所」ではない。現代の「居場所」としての駄菓子屋を取材した。(劉 楓音)

■筆談カフェなど、障害問わず地域の核に

 駅から徒歩約5分。道行く人は、扉が開かれた入り口と大きな窓から、店内の様子が一目で分かる。20円の棒付きあめ、ラムネ、チョコレート、スルメ…。棚には見るのも楽しい約300種類のお菓子が並ぶ。

 さらには、スタッフや大学生のボランティアがレジから手を振ったり、外に立って「こんにちはー」と呼びかけたり。小銭で買えるお菓子と元気な声に引かれ、放課後の小学生やベビーカーを押す親、近所の高齢者、障害がある人ら、さまざまな人が訪れる。

 スロープやおむつ交換台があり、コーヒーを飲んで一息つくスペースも。NPO法人「にしのみや次世代育成支援協会 NOBARS(のうばーず)」(TEL070.8363.6171)が運営する店は、同市の「共生型地域交流拠点」に認定されている。理事長の泉明子さん(52)は「誰もが安心して集まれる場所にしたい。いざという時、頭に浮かぶ存在になれば」と話す。

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 同法人は2012年に発足した。当初から関わる泉さんは、知的障害や聴覚障害がある娘を育ててきたが、地域のイベントなどに「参加しづらい」と感じてきたという。

 「障害の垣根を越えたい」と考え、同法人で野外活動や料理教室を企画した。約5年が経過した頃、駄菓子屋を取り上げたテレビ番組が目に留まった。多様な人が集い、あたたかい雰囲気。これだ-。

 21年から貸し会議室などで「ぷちだがしやさん」を時々開いていたが、今年7月、空き店舗を使って常設店の開店にこぎつけた。

 お菓子を売るだけでなく、イベントも開く。10月中旬には、聴覚障害のある女性が講師を務める「筆談カフェ」を実施。「ぷれままおススメごはん」と題した催しもあり、管理栄養士が栄養満点のドライカレーを振る舞い、作り方や栄養などについて教えた。

 親子がイベントに参加する場合、スタッフが子どもを見守ることも。赤ちゃんが寝返りをすると、来店中の客も含めみんなで大喜び。生後7カ月の子どもを育てる女性は、週3回ほど顔を出すといい、「ここは孤独感を癒やしてくれる。赤ちゃんと2人でいると煮詰まっちゃうこともあるから」と話す。

 地元の老人会会長、市川邦彦さん(84)も常連の一人だ。1人暮らしのお年寄りにとって、店はコミュニケーションの場といい「隣近所の付き合いがいかに大切か、阪神・淡路大震災で感じた。若さとパワーがもらえるこの場所をもっと広めたい」とほほ笑んだ。

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 駄菓子の販売を通じて、地域づくりに取り組む施設は他にもある。

 阪神・淡路大震災で被害を受けた神戸市長田区久保町5の再開発ビル「アスタくにづか3番館」内の「コミュニティハウス」。地元商店街振興組合や神戸常盤大、市などが連携する「くにづかリボーンプロジェクト」が運営する。

 ハウスでは、駄菓子を販売するほか、内臓脂肪や骨量を測る器具を設置し、幅広い世代が利用している。

 また、障害福祉サービスに取り組む一般社団法人「無限」(奈良県生駒市)は、全国5カ所に「まほうのだがしや チロル堂」を開店。子どもや大人の新たな居場所として、全国的に注目されている。

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