宮城県民の安全を守るため 警察学校で学ぶ新人の女性警察官 きっかけは東日本大震災

2023年度に採用され、現在は宮城県警察学校で学ぶ21歳の新人女性警察官です。県民の安全を守るため警察学校ではどのような訓練を受けているのか、そして警察官を目指した思いを取材しました。

名取市にある宮城県警察学校です。手錠や警棒、警察手帳などの装備品を適切かつ機敏に取り扱う訓練が行われています。
澤田周司教官「手帳の角度は何度?」
山王沙耶さん「130度です」
澤田周司教官「約130度な」

現在は、4月に入学した38人が教官の厳しい指導を受けながら日々、訓練に励んでいます。多賀城市出身の山王沙耶さん(21)もその1人です。
山王沙耶さん「4月に比べて周りと一緒に動作を合わせることや、節度ある機敏な動きができるようになりました」

日々訓練に励む

警察学校では大学卒業者は6カ月間、その他は10カ月間にわたり警察官の職務に必要な実務や法律などを学びます。
全寮制で同じ目標を持つ仲間と寝食を共にしながら、同期としての信頼関係を育み警察官としての規律を身に着けていきます。

犯人の制圧や護身のため、警察が剣道や空手などを組み合わせ独自に考案した技、逮捕術を学ぶ授業です。
小手を着け武具を持たずに戦う訓練、そして実際の警棒に近い竹製の棒を使った訓練などがあります。

気合の入った声を出し訓練に励む山王さん。体力を使う逮捕術の訓練も、女性と男性が一緒に行います。
澤田周司教官「突く時は手首を固めてドンってなるように。手首を使っちゃうと手首がいっちゃうから」
山王沙耶さん「現場に出たら女の人だから手加減したり気を抜いてくるとは限らないので、被疑者は女性でも男性でも突然襲い掛かってくるかもしれないので、しっかり実践的な練習ができるように心掛けて行っています」

東日本大震災で決意

山王さんが警察官になろうと決意したのは、小学3年生の時でした。2011年の東日本大震災で、山王さんが暮らしていた多賀城市では震度5強を観測し最大約4.6メートルの津波が到達しました。

山王さんの自宅は1階が浸水し、更に迫る津波から逃れるため母親と2階に避難しました。
山王沙耶さん「どんどん来るにつれて、波の上に波が来るので結構高くなって水位も増して。海の水なのですが海のにおいではなく、へどろのにおいみたいなすごく嗅いだことが無いにおいで」

2階の窓から見た景色を、山王さんは今も鮮明に覚えています。
山王沙耶さん「色々なものが流れてきていて車や人の叫び声、がれき、普段見ないものがいっぱい流れてきて」

山王さんはその後1カ月間、近くの親戚の家に避難しがれきの撤去と片付けのため毎日、被災した自宅に通い続けました。
自宅へと向かう道で山王さんが見たのは、昼夜問わず交差点に立ち続ける警察官の姿でした。
山王沙耶さん「警察官が立っていて交通整理をしていたのですが、あの状況で家族や大切な人がいるかもしれない中で誰かがやらないといけない仕事をやっていた姿を見て、すごく光って見えました」

震災の衝撃で不安と恐怖の日々を過ごしていた山王さん。先の見えない混沌とした状況のなか、県民のために使命を全うする警察官の姿に心を打たれました。
山王沙耶さん「ずっとどんよりしてた時に、警察官の方が私に向かって敬礼をしてくれて今までにない感情があって。私もこうなりたいと思って一番のきっかけになりました」

地域密着を目指して

山王さんは一度、採用試験に落ちてしまいましたが専門学校卒業後に1年浪人し、翌年の試験で合格しました。
山王沙耶さん「なぜなりたいのだろうと考えた時にやっぱり原点があって、それなりの覚悟や責任感がないとやっていけない仕事だと思ってもう一回だけ挑戦したい」

警察学校を卒業するまであと2カ月半。厳しい訓練はまだまだ続きます。山王さんが目指すのは、がれきが残る被災地で見たような地域に密着し県民の安全を一番近くで守る警察官です。
山王沙耶さん「地域警察官になって何かあったらすぐに現場に駆け付けて、1分1秒でも早く困っている人のところに行って、何かあったらすぐに警察官に頼ろうと思ってもらえる警察官になりたい」

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