宝塚俳優急死問題、報告書に遺族側「重要な供述や証拠を無視」 団員4人が聞き取り辞退、SNSで落胆の声も

宝塚歌劇団の俳優の女性が急死した問題を巡る調査報告が公表され、大勢の報道陣が集まった会見=14日午後、宝塚市栄町1、宝塚ホテル

 宝塚歌劇団宙組に所属する俳優の女性=当時(25)=が急死した問題を巡り歌劇団が公表した調査報告について、問題点を指摘する声が上がっている。遺族側弁護士は、遺族が提出した資料や証言が反映されていない点などを批判。交流サイト(SNS)上では、宙組の4人が聞き取り調査に応じていないことに落胆する声が相次いでいる。

 調査は大江橋法律事務所(大阪市)所属の弁護士9人が担当。宙組62人、元宙組1人、理事長を含む劇団役員7人、劇団を運営する阪急電鉄の役員4人、遺族と代理人に、10月初旬から聞き取った。1人35分~6時間で、全部で1500時間に及んだという。

 歌劇団は調査報告について、今月14日の会見で「丁寧に聞き取っていただき、客観的で中立的な報告をまとめていただいた」と評価した。

 一方、調査報告書を受け取った遺族代理人の川人博弁護士は、14日に開いた会見で報告書の一部について「(遺族側から)重要な供述や証拠を提出しているにもかかわらず、言及することなく無視している」と厳しく批判した。

 語気を強めたのは、上級生が女性の額にヘアアイロンでやけどを負わせた事案の検証部分。報告書ではやけどの状態を詳細に述べた母親の証言や、当日の母娘によるLINE(ライン)のやりとりなどが引用されていないという。歌劇団関係者の証言を中心に「やけどは大したことではないかのように示されるのは納得できない」とした。

 また、調査チームの位置づけについても「日本弁護士連合会が定める第三者委員会ではない」とし、「調査の方法、結果の取り扱いなど第三者委の規定にのっとったものではなく、あくまで企業の依頼を受けた調査委員会の域を出ない」との見方を示した。

 歌劇団は聞き取りの対象を、宙組の全66人と想定していたが、うち4人は辞退したという。会見で記者が理由を問うと、木場健之理事長は「ご容赦ください」と回答を拒んだ。

 X(旧ツイッター)などでは「心理的に話せない人もいたのでは」と推察するコメントもみられたが、「調査報告書は4人が聞き取り辞退している時点で未完成」「4人がヒアリング拒否したままでいじめやパワハラを確認できなかったと発表できる感覚がずれている」「拒否理由は言えないって…だから隠蔽体質って言われるんだよ」と厳しい意見が相次いだ。

 遺族側は歌劇団に対し、認識が異なる部分の再検証を求めている。(小尾絵生)

© 株式会社神戸新聞社