高出力レーザーシステムの課題と今後のロードマップとは? 防衛装備庁が明かす

By Kosuke Takahashi

高出力レーザーシステム(防衛装備庁の動画より)

防衛装備庁は、14日に都内で開幕した「防衛装備庁技術シンポジウム2023」でドローンや迫撃砲弾を撃破する高出力レーザーシステムの研究成果を発表した。

登壇した防衛装備庁次世代装備研究所の担当者はまず、高出力レーザーの主な利点として2つのポイントを挙げた。1つ目は電源が供給される限り、撃ち続けられる「弾切れ」がないこと。そして、2つ目は迎撃にかかるのは電気代だけで低コストであること。このため、防衛装備庁としても従来の戦闘様相を一変させるゲームチェンジャーとして期待していると指摘した。

防衛省の予算措置を受け、川崎重工業と三菱重工業が既に車両搭載型の高出力レーザーシステムの研究試作を完成させた。

川崎重工業の研究試作は2018年度から進められ、迫撃砲弾と小型無人機を撃破する出力100キロワットのレーザーシステム。2023年2月に完成し、地上に設置された迫撃砲弾の誘爆に成功した。

一方、三菱重工業の研究試作は2021年度から実施され、小型無人機を撃墜する出力10キロワットのレーザーシステムだ。同社は鹿児島県の種子島で実証試験を繰り返し、1.2キロ先のドローンを撃ち落とすことに成功した。

防衛装備庁担当者は、高出力レーザーシステムの課題との1つとして「電源設備の小型化」を挙げた。川崎重工業のレーザーシステム研究試作は、10キロワットの国産ファイバーレーザーを10本結合して総出力100キロワットを実現した。しかし、一般的にはレーザーの変換効率は30パーセントとされ、100キロワットの高出力をコンスタントに実現するためには300キロワット以上の大量の電源が必要となっている。

このため、2023年2月に納入された川崎重工業のレーザーシステム試作装置は40フィートコンテナ(長さ約12メートル、幅2.4メートル、高さ2.4メートル)2台分の大きさになったという。

2023年2月に納入された川崎重工業の高出力レーザーシステム試作装置は40フィートコンテナ2台分の大きさになったという(登壇した防衛装備庁担当者の説明資料より)

防衛装備庁担当者は高出力レーザーシステムの今後のロードマップとしては、迫撃砲弾と小型無人機を撃破する川崎重工業のレーザーシステムと、無人機を撃墜する三菱重工業のレーザーシステムのそれぞれの装備化を目指す方針を示した。そして、「段階的に研究を進め、装備システムとしての実用化とともに、将来的なレーザーによるミサイル対処システム実現への技術力向上を進めていく」と説明した。

高出力レーザーシステムのロードマップ(登壇した防衛装備庁担当者の説明資料より)

現在の高出力レーザーシステムの研究試作は、赤外線カメラで高速目標を追尾し、高出力レーザー光を集光させて、撃破するまで追尾・照準・照射することになっている。

防衛装備庁担当者は、高出力レーザーシステムが将来海上自衛隊の護衛艦に搭載される可能性もあると説明した。その際、射撃管制に既存のSPY6といったレーダーを使うのかとの筆者の問いには「搭載するプラットフォーム次第だが、その可能性はある」と述べた。

高出力レーザーシステムのイメージ図(防衛装備庁次世代装備研究所のパンフレットより)

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© 高橋浩祐