セラピードッグの効果は参加者の性別によって変わる?【研究結果】

大学生のための犬介在セラピーと参加者

欧米の大学では自宅を離れて寮などで暮らす学生の割合が高く、課題や試験の負担の大きさから、学生のメンタルケアは各大学の重要なテーマのひとつになっています。

そのような状況を受けて、学生向けの『犬介在セラピー』を導入する大学が増えており、確かな実績と人気を得ていることが報告されています。

犬介在セラピーとは、学生がセラピードッグと触れ合ったり犬のハンドラーと話をしたりする機会を提供するもので、学生にとってはセラピーを受けるハードルが低く、ストレス解消やリラックスの効果が高いというメリットがあります。導入する大学側にとっても、低コストで高い効果をあげられるのは喜ばしいことです。

大学生のための犬介在セラピーについての研究も数多く行われているのですが、過去の研究の参加者の多くが女性に偏っていることが指摘されていました。

また、過去の研究では犬介在セラピーが有効かどうか、どのように有効かについては検討されて来ましたが、誰に対して有効かについては検討されていませんでした。

このたび、カナダのブリティッシュコロンビア大学オカナガン校教育学部の研究チームが発表した犬介在セラピーに関する研究は、異なる性別の参加者がセラピードッグとのセッションを受けた時の差異を検証したものです。

犬介在セラピーを受ける前と受けた後に幸福度をチェック

この研究への参加者は、カナダ西部の中規模大学の学内でのポスターやソーシャルメディアなどを通じて募集されました。

最終的に163名が参加し、その内訳は、女性80名(49%)、男性54名(33%)、ノンバイナリーおよびその他のジェンダー28名(17%)でした。ノンバイナリーとは、性自認が女性または男性どちらにもはっきりと当てはまらないと考える人のことです。

セラピードッグとハンドラーは、ブリティッシュコロンビア大学の犬介在セラピープログラムに登録している中から選ばれた15頭と15名です。

セッション中の犬の疲れやストレスは、ハンドラーと犬に精通した研究助手によって注意深く観察され、常に犬の福祉が優先されるよう定められています。

参加者はセラピードッグとのセッションの前に、心身の健康と幸福度を評価するための質問票への記入を求められました。

質問票の内容は、キャンパスや社会とのつながり、肯定的および否定的な感情の有無、物事に対する楽観度、ホームシック、孤独感、ストレスなどの項目についての自己認識を問うものでした。

参加は3〜4人のグループに分かれて、セラピードッグとハンドラーとの20分間のセッションに参加。セッションの後に参加者はもう一度質問票への回答を行ない、これらの結果が分析されました。

セラピードッグとのセッションは性別に関係なく幸福度をアップさせる!

セッション前とセッション後の回答の内容を分析した結果、ほとんどの参加者の幸福度が著しく向上していました。具体的には、ストレス、孤独感、ホームシック、否定的感情、不安感が減少し、幸福感、社会とのつながり、楽観性、肯定的感情が有意に増加していたとのことです。

この結果は事前の予想や先行研究の報告とも一致しており、さらに幸福度の向上について性別による違いは見られませんでした。

この研究は、犬介在セラピーの効果と参加者の性別について検証した初めてのものであり、犬介在セラピーはさまざまな性別の参加者に等しく有効であることを示す結果となったようです。

今回の調査は性別の自認について女性、男性、「ノンバイナリーまたはその他」という3つだけの分け方で行われましたが、今後はさらに多様なジェンダーの参加者と、犬介在セラピーの効果を検証したいと研究者は述べています。

まとめ

大学での犬介在セラピーの効果を性別によって検証したところ、セラピーは性別に関係なく参加者の幸福度を向上させたという研究結果をご紹介しました。

この研究のような犬介在セラピーの場合、犬はトレーニングは受けるものの、参加者に対して特別な何かをするというわけではありません。犬の存在そのものが人の心を和らげるということがわかります。

極端な例ではzoomなどを使ったモバイルカウンセリングでも、モニターの中に犬の姿が見えると効果が高くなるという報告もあり、改めて犬に感謝したくなりますね。

《参考URL》
https://doi.org/10.1079/hai.2023.0037

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