越水センサー360基整備 国交省、那珂・久慈川水系の監視強化 茨城県内

取り付けたセンサーについて説明する常陸河川国道事務所の三好健次副所長=水戸市城東

国土交通省関東地方整備局は茨城県内の那珂川・久慈川両水系で、越水などを感知するセンサーを計360カ所に設置し、全国に先駆けて運用を始めた。2019年の東日本台風(台風19号)を教訓とした監視体制強化の一環で、簡易型の水位計や監視カメラも増設した。常陸河川国道事務所は「避難の判断に必要な情報の速やかな提供につなげたい」としている。

同事務所によると、センサーは20年度から順次設置してきた。整備したのは、過去に氾濫が起きた箇所や周辺に住宅が多い場所など。那珂川水系は水戸、ひたちなか、常陸大宮の3市に計284基を、久慈川水系は常陸太田、常陸大宮、東海の3市村に計76基をそれぞれ取り付けた。

センサーは直径約4センチ、厚さ1センチ。堤防のポールに内蔵させ、25~50メートル間隔で配置する。5年間交換が必要ない電池式とした。

水没すると受信している電波が弱まるため、越水した可能性が伝わる。衝撃や傾き、センサーの位置の変化を感知し、堤防決壊の可能性も把握する。こうした情報を基に現場を目視したり、別のセンサーや水位計の状況などを確認したりして、氾濫発生情報の発表について判断する。

19年の東日本台風の際、両河川は国管理区間で3カ所ずつ堤防が決壊したが、氾濫発生情報を発表できなかった。原因について同局は「複数箇所での決壊、問い合わせの増加による混乱などで情報が共有されなかった」とする。こうした教訓から、センサーの導入で監視体制を強化した。

両水系では17年度以降、増水時に起動する「危機管理型水位計」を80基、一定時間ごとに静止画を撮影する「簡易型監視カメラ」を37基、それぞれ設置している。いずれも機能を絞り、太陽電池式とすることで、設置しやすく費用が抑えられたという。

15年の関東・東北豪雨の際、避難の遅れが大きな課題となり整備を強化した。水位を測る施設は常時観測する既設の水位観測所と合わせて102カ所、監視カメラは高精細映像の既設設備と合わせて113カ所に拡大。全ての地点の水位や河川の状況を国土交通省の専用サイトで一般利用者も確認できる。

県内で近年、大雨による水害が頻発・激甚化しており、常陸河川国道事務所の三好健次副所長は「新たな設備を活用し、増水、洪水時に避難の判断材料を早く提供できるようにしたい」と話した。

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