岡南飛行場に小型機6年放置 岡山県 停留期限設けず「想定外」

 岡山県が管理する岡南飛行場(岡山市南区浦安南町)の滑走路脇エプロン(駐機場)に個人所有の小型機が6年近く止められ、停留料約360万円が支払われていないことが16日、関係者への取材で分かった。実質的に放置された状態で、機体の一部は劣化し、検査の有効期限も切れているとみられる。停留期限を設けない県独自のルールが盲点となった格好で、県は制度変更の検討に入った。

 関係者によると、小型機は2017年12月から滑走路北側のエプロンの一角に駐機。当初は1日当たり約1700円の停留料を県に支払っていたが、18年5月以降は支払いが滞っている。所有する宮城県塩釜市の男性は文書や対面による県の督促に対し、機体の売買を巡るトラブルなどを理由に拒み続けたという。20年ごろから連絡が取れなくなり、岡山県は今年5月、一部料金の支払いを求める訴えを岡山簡裁に起こしている。

 この小型機は車検に相当する「耐空証明」の期限が切れて既に数年経過しているとみられ、車輪のタイヤの空気が抜け、機体の所々にさびたような変色も見られる。だが、個人の所有物のため県が機体を移動させることは難しいといい、取り扱いに苦慮しているのが実情だ。

 小型機の停留を巡っては、期限を設けている空港が大半で、岡南飛行場と同じく小型機の利用が多い国管理の八尾空港(大阪府八尾市)は「長期占有されるリスクが拭えない」ことを理由に最長で3泊までしか認めていないとする。

 一方、岡山県は利用促進の観点から停留期限を設けておらず、県幹部は取材に「今回のケースのように機体が放置されることは想定していなかった」と説明。再発防止に向けて期限の設定といったルールの変更を庁内で検討していることを明らかにした。

 ここポイント! 個人所有の小型機が空港の滑走路脇に6年近くも放置されるという異例の事態を招いた背景には、岡山県の独自ルールの存在がある。小型機専用の岡南飛行場は毎年2億円前後の収支不足を抱える赤字体質。停留の無期限ルールは「使いやすい空港」を目指すことで収入増につなげるため戦略的に取り入れ、実際に小型機の利用増といったメリットもあるという。ただ、今回のようなモラルハザード(倫理観の欠如)を招く温床にもなりかねず、適切な利用を担保する仕組みの構築が急がれる。

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