茨城・境町がスマートシティ推進事業 防災、健康 データ連携 個人に合う計画提案

2020年から運行している自動運転バス=境町

茨城県境町は自動運転バスや住民の健康データなどを連携させ、高齢者の健康増進や災害時の円滑な避難につなげる「スマートシティ推進事業」に乗り出す。大雨時に利根川の水位や避難情報をバス停に配信するほか、個人に合った健康プログラムを提供するなど、デジタル技術を活用した新たな生活・都市インフラの構築を目指す。

事業は防災強化と、高齢者の筋力低下など「フレイル」の予防を中心に取り組む。17日に総務省の「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」に選定され、支援金が交付される。

総事業費は約9千万円を見込み、このうち約4500万円を国が支援する。町は今月、準備に着手し、来年3月までに運用を始める方針。

防災事業では、2020年に始めた自動運転バスの停留所を活用する。主なバス停や道の駅など町内主要施設にデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、大雨時に河川の水位や氾濫を含む災害に関する情報を発信する。平常時はバスの運行状況や健康施設などを案内し、外出中でも効果的に情報が入手できる仕組みを構築する。

フレイル予防事業では、フィットネスクラブなど健康づくりを支える民間事業者と連携し、利用者の希望に応じて健康データを集積する。登録者ごとに合った運動プログラムを提案するほか、体力測定の習慣化などを促す。

健康データは今後、町の防災活動にも生かす。住民の体力に合わせた避難経路や避難先を選び、円滑で速やかな避難につなげる。自力での移動が難しい要支援者に対しては、自動運転バスで送迎する仕組みなども検討していく。

境町は南西部が利根川に面しており、町全体の9割が「洪水浸水想定区域」に指定されている。全人口のうち65歳以上の高齢者は30%(10月1日時点)に上ることから、自力で避難できる体力を維持してもらうことが課題と位置付けている。

町地方創生課の担当者は「デジタル技術を活用し、高齢者の普段からの健康づくりや、災害時の住民に対する的確な避難情報発信など、安心安全のまちづくりに役立てたい」と話した。

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