「先生がいなかったら、孫は死ななかった」津波に襲われた大川小学校から学ぶ、学校防災の重要性

テレビ愛知

東日本大震災の津波で亡くなった子どもたちの遺族の弁護人が、愛知学院大学で講演しました。そのなかで弁護人が強く訴えたのは、学校防災の重要性です。

教壇に立ったのは、吉岡和弘弁護士です。吉岡弁護士は、東日本大震災の、津波によって亡くなった大川小学校児童の遺族弁護人を務め、宮城県や石巻市を相手に学校の責任を問う裁判を起こしました。

吉岡和弘弁護士:
「先生がいなかったら、孫は死ななかった。これが今回の本質です」

あの時、大川小学校では何が起きたのでしょうか。

学校の管理下でもっとも多くの子どもたちが犠牲になったのが石巻市の大川小学校です。児童108人のうち74人が津波の犠牲になりました。全校児童は、震災直後、校庭に集まりました。20人あまりは、保護者が引き取りにきましたが、残りの生徒は、津波が来るまでの50分間、避難することなくその場にとどまりました。

そして、津波が押し寄せる直前になって、裏山ではなく、川に近い高台へ逃げます。その時、川を越えて押し寄せた津波に襲われ、児童74人、教職員10人の命が奪われました。

震災から3年後の2014年3月。犠牲になった児童のうち23人の児童の遺族が石巻市と宮城県に対して、責任と真相を求めて、裁判を起こしました。

提訴当時の遺族側の会見:
「何が問題でこういう事故になったのか、責任の所在を明らかにしていただきたく提訴した」

そして2019年10月、最高裁は、市などの上告を退け、遺族側勝訴とした2審、仙台高裁の判決が確定。市と県に14億3600万円の支払いを命じました。判決の中で、当時の元校長らは知識や経験を蓄積できる立場にあり、津波の被害を受ける危険性を予見することは可能であったとしたのです。

講演後、吉岡弁護士に話を聞きました。裁判では、学校側が津波を予見することができたとする画期的な判決を勝ち取りましたが、明らかにならないこともありました。

吉岡和弘弁護士:
「なんで子どもがこういうことになったのかということについては、未だに教育委員会や生存した先生からの話が聞けないでいる。本当はそこのところを詰めていかないといけないのに、裁判では明らかになっていない」

「本来は第三者委員会がしっかりやっていれば、もっと遺族たちが求める真実に近づけたと思う」

今後、学校現場で、こうした悲劇を繰り返さないために、吉岡弁護士に見解を聞きました。

吉岡和弘弁護士:
「文科省が主導して、今回の大川小問題を1つの材料にして、何が成功して何が失敗したのかを、もう一度洗い直していく必要がある。もし、こういう事故が起きた時に証拠保全して、校長の携帯データが散失したこともあった。事故があった時はこういう風に真実を確保するノウハウを確立しないといけない」

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