旧細川刑部邸(熊本市)修復前に期間限定公開 震災の痕跡見納め、17日から 幻想的なライトアップも

熊本地震で被災し、土壁が脱落して柱が傾いている旧細川刑部邸の主屋(熊本市提供)

 熊本市は2024年度から、熊本地震で被災して閉鎖中の旧細川刑部邸の復旧工事に着手する。剝げ落ちた主屋内の壁や倒壊した塀などを修復し、28年度中に一般公開を再開予定。今月17日から12月3日までの限定公開が、被災の痕跡が残る姿を見られる最後の機会になる。

 市は16年の熊本地震後、18~19年度に建物の被災状況調査と耐震診断を実施。地震の揺れで建造物の屋内外の土壁が剝がれ落ち、屋根瓦がずれるなどの被害を確認したほか、主屋などで耐震不足との結果が出た。

 復旧工事は、建物の土壁を全て取り払って骨組みだけにした上で、柱の高さを調整するなどして傾いた建物のゆがみを補正。塀を含めて耐震補強する。

 市熊本城総合事務所は「瓦や木材などの部材を補修しながら活用し、元の状態に戻したい。再び安心して見てもらえるよう、慎重に進めたい」としている。復旧工事にかかる費用は来年度予算に計上予定。27年度末の完工を目指す。

熊本地震で塀が倒壊し、土壁も脱落した旧細川刑部邸=16日、熊本市中央区

 旧細川刑部邸は1646年、初代藩主・細川忠利から弟・興孝(刑部少輔)に与えられた武家屋敷。創建当時は現在の中央区東子飼町にあり、市が1993年に熊本城三の丸に移築・復元した。

 客間がある木造の主屋や別棟の茶室、主屋の一部で2階建ての居室「春松閣」などで構成し、建坪は計約300坪。江戸時代の武家屋敷に見られる書院造で、ふすまや障子の間仕切りや敷き詰められた畳が特徴だ。主屋と茶室は県重要文化財に指定されている。

 今月17日からは邸内の庭園に限定して一般公開。夜間は見頃を迎える紅葉をライトアップする。庭園北側の梅園には竹あかりのオブジェも設置することにしており、「邸内の主屋も初めてライトアップする。ミストを使って例年と違う幻想的な風景を演出したい」と同事務所。開園時間は午前9時から午後9時。ライトアップは午後5時ごろから。(上村彩綾)

土壁が剝げ落ちた旧細川刑部邸の主屋の内壁。建具も損傷している(熊本市提供)
破損やずれが生じた旧細川刑部邸の主屋の屋根瓦(熊本市提供)

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