その意識がスイングを壊す? 「フェースはシャットに」の落とし穴

フェースを開かないように意識すると気持ちよく振れないという受講者が登場

球のつかまえ方には2つのタイプがあります。一つは腕のローテーションを抑え、フェースが開かないようにキープして、ボディターンで球をつかまえるタイプ。もう一つは腕のローテーションを積極的に使って、適切にフェースを開閉させながら、球をつかまえるタイプです。2つのタイプには、はっきりとした違いがあって、自分に合わないつかまえ方で練習を続けると、なかなかショットが安定せず、深みにはまる可能性が非常に高いと言えます。今回は、ゴルファーの約4割を占める、腕のローテーションを使うべきタイプの特徴について、ご紹介しましょう。

今回の受講者は…

「ドライバーに悩んでいて、スライスしたり、プッシュアウトが出たり、球がうまくつかまりません。そこで、バックスイングでフェースをシャットにキープすることを試みていますが、今度はトップをどこに上げたらいいのか分からなくなって全然しっくりきません。また、フェースをシャットに使うと、フォロースルーで腕が窮屈な感じがして気持ちが悪いんです。ドライバーのシャフトを短くすることで、スイング中の違和感を少し改善できたのですが…」(渡邉さん ゴルフ歴18年 平均スコア90)

スイング解析でドライバーが苦手な原因を究明

腕をだらんと下げたときに左手の甲が飛球線方向を向くのはリストターンで球をつかまえるタイプ

「フェースをシャットにキープすると窮屈に感じる」とか、「ドライバーのシャフトは短い方がうまく振れる」とか、そんなお話しだけでも腕のローテーションで球をつかまえるタイプだと分かりますよ。簡単な判別法としては、腕を脱力して下げたときの、左手の甲の向きを見ます。渡邉さんのように飛球線方向を向く方は、典型的なローテーションで球をつかまえるタイプ。フェースをシャットにキープしてボディターンで球をつかまえる練習は逆効果になってしまうのです。それではスイングを詳しく見ていきましょう。

インパクトの瞬間のヘッド軌道はインサイドアウトでフェースが開いている

まず、球がつまらない原因としては、大半のアマチュアに当てはまるようなアウトサイドインの軌道ではありません。次にシャフト解析のデータを見てみると、思った通りリストターン比率の数値でも、積極的にアームローテーションを使った方がいいタイプであることが分かります。使ったほうが良いというよりは、それを適切に使う術を確実に身につけなければいけないタイプです。

腕のローテーションの角度を見ると、アドレス時に対してインパクトで22度も戻っていない

腕を脱力した状態で左手の甲が飛球線方向を向くという簡易的な判別をしましたが、実際に左腕をどの程度まで使っているかを自覚することが大切です。それはモーションキャプチャーのデータで詳しく見ることができます。渡邉さんの場合、アドレス時の左腕の回旋角度と、インパクト時の角度を比較すると、22度も戻っていないことが分かります。理想はアドレスとインパクトで左腕の回旋角度差がゼロに近い状態。つまり、腕のローテーションを使うべきタイプなのに、それを全然使えていないのです。

自分のタイプを知って気持ちよく振り抜けるスイングへ

ハーフウェイバックではフェースが正面を向くぐらい開いてもOK

さて、レッスンに入りましょう。まずは、テークバックでフェースをシャットにする意識を捨てましょう。ボディターンを使うべきタイプと、腕のローテーションを使うべきタイプは、根本的に体の動かし方が違います。渡邉さんがフェースを開かないようにテークバックしようとすると、自然な体の回転も損なわれるのです。ハーフウェイバックでは、フェースが正面を向くぐらいに開いていいので、フェースコントロールを意識せず、むしろ腕の上げやすさや体の回しやすさを優先してください。

トップからハーフウェイダウンまでに左腕を捻じり戻すことを意識する

腕のローテーションを使うべきタイプが球をつかまえるには、切り返しからハーフウェイダウンまでが最も重要です。ここで開いたフェースを閉じていく動きをしっかりと意識しましょう。トップまでに右方向にねじれた左腕を、ハーフウェイダウンまでにしっかりと左に戻していくことが大切です。腕のローテーションを使うタイプだからといって、決してインパクト直前で腕をターンさせたり、手首をこねたりはしません。ハーフウェイダウンまでに腕を戻したあとは、インパクト周辺で腕を操作する必要はありません。むしろ、ハーフウェイダウン以降は何もしないことが理想です。

水平素振りでスタートと同じ角度になるように左腕を戻す練習が効果的

また、水平素振りも左腕を戻す動きを身につけるのに有効なドリルです。直立して体の正面に据えたクラブを体の回転でトップまで上げ、再び体の正面に戻したときにフェースの向きがスタートと同じ状態に戻るよう左腕を回旋しましょう。なお、ドライバーに関しては、今の長さ(43インチ)のままで良いと思います。渡邉さんのタイプは、シャフトが短いほうが操作しやすいからです。また、慣性モーメントの高いヘッドだと、扱いにくくなるタイプなので、ヘッドのヒール側に鉛を貼ってヘッドが返りやすくする工夫をしても良いでしょう。

この2つのタイプは、プロゴルファーレベルでも明確に分けることができます。自分のタイプを自覚せずに、渡邉さんのように自分に合わない練習をしたり、誤った意識でスイングしてしまうと、泥沼にハマる可能性が高い。そうならないためにも、まずは自分のタイプをこうしたデータ分析で知ることが大切なのです。

それでは今回のレッスンを動画でご覧ください。

動画:シャットフェースがしっくりこない人が球をつかまえるには?【サイエンスフィット】動画はオリジナルサイトでご覧ください

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