茨城ネタ、連載漫画人気 坂東生まれの「豚もう」さん 魅力紹介、コラボ企画も

タブレットを使って制作する豚もうさん=坂東市

茨城の方言に自虐ネタやご当地ネタ-。小学館の漫画アプリ「マンガワン」で隔週連載中の「茨城ごじゃっぺカルテット」は、思わず笑いが込み上げる作品だ。作者は茨城県坂東市生まれの「豚もう」さん(32)。県内の観光地や施設を紹介しながら、友人同士の和気あいあいとしたやりとりを描いて人気を集めている。

作品の構想は「関東のゆるい田舎の感じを漫画にできたらいい」と、当時の編集者と雑談する中で芽生えた。魅力度ランキング最下位県の隠れた魅力を掘り起こし、茨城を好きになるよう願いも込め、2020年に連載が始まった。

主人公は東京から坂東市に引っ越した女子高生。「茨城でナメられたら、人生終わる」と思い込んだ彼女は転校初日のあいさつで大恥をかく。その後、友人との交流を経て茨城への印象を変え、「郷土研究部」で牛久大仏や袋田の滝などの名所を紹介する記事を書くという筋書きだ。

「小さい頃は教科書への落書きが好きだった」と語る豚もうさん。大学進学まで市内で育った。都会に憧れ東京のアニメ制作会社に就職したが、激務が続いて退職。漫画家として20代半ばに帰郷した。「地元のお気に入りの場所は長須地区の田んぼ。自然がたくさんあって、何もないところが落ち着く。癒やされる」。都会暮らしで気付いた茨城県の魅力を作品にも反映させているという。

連載の取材で初めて訪れた場所も多い。自転車で周遊したという霞ケ浦もその一つ。物語のクライマックス「卒業旅行」で主人公たちが訪れる。友人同士のやりとりを描く場面では、地元の友人との会話を参考にしている。

当初は2巻程度を予定していたが、反響が大きく、単行本は現在5巻まで刊行。主人公の入学から卒業までを描き切り「茨城の魅力を余すところなく紹介できた。ここまで続くとは思わなかった」と感慨深げだ。

同作品の担当者の神村正樹さん(50)は「第1巻から応援してくれる地元書店の存在も心強い」と話す。今では茨城県内の書店でコーナーができ「地元の熱い支持に支えられてきた」と振り返る。

人気の高まりに合わせ、コラボ企画も実施された。関東鉄道ではスタンプラリー、坂東市では路線バスとのキャンペーンが行われ、ふるさと納税のお礼状にもキャラクターが採用された。連載は11月中に終了するが、次も茨城をテーマに作品を構想中という。

© 株式会社茨城新聞社