選挙ライター畠山理仁氏の生き様を描いた映画「NO 選挙,NO LIFE」!主役と制作陣が語る「選挙」の魅力とは?

全国の選挙を追い続けてきたフリーランスライター・畠山理仁氏に密着したドキュメンタリー映画「NO 選挙,NO LIFE」が2023年11月18日から全国で上映がスタートしました。畠山氏、監督の前田亜紀氏、プロデューサ―の大島新氏が映画を通して伝えたかったこと、そして撮影を通して考えた選挙への想いを聞きました。

選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
前田さんと大島さんはこれまで様々な題材のドキュメンタリー作品を世に送り出してきました。今回の作品で選挙をテーマとしたのはどのような経緯があったのですか。

前田亜紀監督(以下、前田氏):大島さんの監督作「なぜ君は総理大臣になれないのか」、その続編にあたる「香川1区」では、全国的にも注目されていた選挙区を取り上げ、選挙って候補者が自分だけじゃなく周りの人の人生を背負ってこんなにも命がけで臨むものなのかと、とてもドラマチックな現場でした。

しかし、畠山さんの「黙殺」を読んでから、それまで自分が知っている選挙は、いわゆる主要候補同士の戦いの印象が強く、何かが抜け落ちていることに気付きました。そうして、さらに選挙に向き合うためにも、畠山さんを通した選挙戦を撮りたいと思ったのがきっかけです。

監督の前田亜紀氏

編集部:
映画のみどころは?

大島新プロデューサー(以下、大島氏):
まず、「選挙の面白さ」ですね。畠山さんによる候補者への全員取材に密着したからこそ見えてくる面白さは、他のメディアで見えてくるものとは一味も二味も違います。また、「畠山さんの生き方」を描く人物ドキュメンタリーでもあります。全員取材にこだわる畠山さんの「ピュアさ」は他人からみると「アホやないか」と思われるかもしれませんが、実に魅力的です。

プロデューサーの大島新氏

編集部:
畠山さんは普段とは逆の「取材される側」になっていかがでしたか。

畠山理仁氏(以下、畠山氏)
最初は、お受けするかとても悩みました。しかし、自分が普段は色々な人に取材をお願いしていることを考えると断れないなと。それに、自分がこれだけわくわくして取材している選挙を、他の人が肩越しに撮ってくれる機会なんて滅多にありません。私は候補者全員に取材をしないと記事を書かないことがモットーですが、一緒に現場に行った前田監督がどうやって料理して映画として見せるのかにもすごく興味も湧いてきて、ぜひお受けしようと考え直しました。

議員の方々は、ご自身の選挙の時には他人の選挙を見る余裕がないと思います。この作品を通して、他の候補者はこんな戦い方をしているのか、という気づきがあると思います。

選挙ライターの畠山理仁氏

選挙なしでは生きていけない!その理由は?

編集部:皆さんが思う選挙の魅力とは何でしょうか?

畠山氏:毎回、どの選挙に行ってもハズレがない必ず学びがある。そして、同じ選挙は二度とない点です宝探しに出ている気分を自分以外の有権者にも届けたいです。

*田氏:*
その人の人生だけを考えれば、わざわざ供託金を払ってまで選挙に出る必要はないかもしれない。それでも、社会を良くすることを第一に考えて立候補している人がたくさんいることに感動します。

大島氏:私は選挙は人間がむき出しになる装置だと感じています。前作「なぜ君」でも、小川淳也さんが家族の前で地元の方から罵倒されたり、他候補に立候補しないでくれと頼みに行ったり、対立候補だった平井卓也さんも街頭演説で怒りを露わにしたり。被写体の感情が揺れるほど、見応えのあるドキュメンタリーになります。そこかしこの選挙現場で、色んな人間性がむき出しになっている現場があるんだろうなと思っています。

畠山氏:
この映画の中で僕はずっと選挙取材を辞めたいと言っているんですが(苦笑)、世のため人のためにわざわざリスクを背負って選挙に出ている人の話をしっかり聞いて有権者に伝えることが必要じゃないか、そう思う気持ちが今でも続けている理由になっています。

前田氏:畠山さんが25年間、唯一無二の姿勢を貫いているのには確たる信念をしっかりとお持ちだからですね。一方で、実際に話してみるとすごく柔らかい人柄で、むしろ結構抜けている部分があるのも魅力です。今回の作品では、こうした人間的な魅力もぜひ皆さんにシェアさせていただきたいです。

選挙を盛り上げるためには?

編集部:
一方で、投票率が戦後一貫して低下を続けているなど、一般的には選挙が「ウケていない」状態です。

大島氏:とても悩ましいことです。有権者が自分の1票を信じてないことが影響している気はします。

前田氏:選挙の面白さを伝えるのが今作品のテーマでしたが、大多数に選挙は「なんかつまらない」と思われているんでしょうね。主権者教育が十分ではないという問題もあると思います。

大島氏:
選挙のエンタメ化は、有効なのでしょうか。アメリカ大統領選の盛り上がり方はまさにそうですよね。

畠山氏:いろんなアプローチがあっていいと思います。この作品の中でも、ある候補予定者がピラミッドを書いて、今の政党は「見えている層」しか相手にしていない。そこからはみ出した候補者が注目を集めるようにならないと、普段投票に行かない人が行くようにはならないと指摘するシーンがありますが、その通りだと思います。

大島氏:あそこは大事なシーンでしたね。

畠山氏:投票率が上がらないのは政党と候補者の責任です。公の仕事を目指す人たちには、「自分の1票には力がある」と有権者を勇気づけることを意識してほしいですね。自分の支援者以外にどんどん広げていくことが国の政治や地方自治を豊かにします。

立候補者が増えれば、自分のレベルも上がります。正しい競争の中で自分は勝ち抜いていくぞ、実力をつけるぞという意識に転換してほしい。フェアで前向きな人は魅力的です。今まで選挙に行ってなかった人たちも興味を持ってくれて、民主主義の底上げにつながります。

大島氏:
なぜ君」から始まっていろんな選挙を扱った映画を出してきましたが、今回が真打ち登場といったところです。この作品を通じて、選挙の豊かさを伝えられればと思います。

 【略歴】

【写真中央:畠山理仁(はたけやま・みちよし)氏】1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中に取材・執筆活動を開始し、国内外の選挙を取材している。大手メディアが取り上げない、いわゆる「泡沫候補(無頼系独立候補)」に光を当てた『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの闘い』(2017年、集英社)で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞。主な著書に、2020年3月の熊本県知事選から2021年8月の横浜市長選の現地ルポを収めた『コロナ時代の選挙漫遊記』(2021年、集英社)など。

【写真左:前田亜紀(まえだ・あき)氏】1976年大分県出身。2012年よりフリーランスのディレクターとして活動し、大島新氏とタッグを組んで、「情熱大陸」(MBS)や「ETV特集」(Eテレ)など多数のテレビドキュメンタリーの制作に携わる。2020年に公開した小川淳也衆議院議員を初当選から17年間追い続けた「なぜ君は総理大臣になれないのか」は「なぜ君」の略称で知られ、3・5万人動員の大ヒット作となった。ほかに、「香川1区」、「シン・ちむどんどん」、「劇場版センキョナンデス」などの選挙をテーマとしたドキュメンタリーを世に送り出している。

【写真右:大島新(おおしま・あらた)氏】1969年神奈川県藤沢市生まれ。1995年早稲田大学卒業後、フジテレビに入社し、「ザ・ノンフィクション」などドキュメンタリー番組のディレクターを務めた。1999年に同社退社後にフリーに転身、2009年に映像製作会社ネツゲンを設立。

【映画情報】

11月18日(土)よりポレポレ東中野、TOHOシネマズ日本橋ほか全国順次公開

公式サイト: nosenkyo.jp

3大都市にて先行上映イベント開催決定!   

●名古屋先行上陸イベント
場所:ミッドランドスクエアシネマ
日程:12月1日(金)
登壇ゲスト:前田亜紀(監督)、畠山理仁、関口威人(ジャーナリスト)、大島新(プロデューサー)

●大阪先行上陸イベント
場所:なんばパークスシネマ
日程:12月8日(金)
登壇ゲスト:前田亜紀(監督)、畠山理仁、川中だいじ(日本中学生新聞) 、大島新(プロデューサー)

※上映後の舞台挨拶になります。
※ゲスト・イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください。  

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