ユニバーサルツーリズムあ~だこ~だ vol.6「ユニバーサルツーリズム推進を加速する兵庫県は『選ばれる』観光地へ 」

「ユニバーサルツーリズム推進条例」ご存知ですか?

2021年11月、兵庫県では斎藤元彦知事が「『行きたい場所』から『行ける場所』に、日本一いや世界一多様な方々が旅行しやすい県にしたい」と宣言され、ユニバーサルツーリズムの推進が一気に加速しました。

その後、啓発のための各種セミナーや研修、相談を受けられる人材「ひょうごユニバーサルツーリズムコンシェルジュ」の育成、「ユニバーサルなお宿」登録や対応支援など、次々と着手。2023年4月1日には、「高齢者、障害者が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例(通称:ユニバーサルツーリズム推進条例)が制定されました。

兵庫県ユニバーサルツーリズムの推進

兵庫県「ユニバーサルツーリズム推進条例」

姫路城のバリア・バリアフリーの見える化

11月14日、姫路市で令和4年度に認定された第一期ひょうごユニバーサルツーリズムコンシェルジュ対象のフォローアッププログラムが開催され講演の依頼を受けました。

講演前に姫路のまち、姫路城を車いすユーザーと歩いたのでその取り組みをご紹介します。

天守閣の前の備前丸

ゆったりと広い歩道の大手前通り

姫路には日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク(事務局:神戸市)に加盟する「姫路ユニバーサルツーリズムセンター」があり、誰もが姫路を楽しんでいただけるように、姫路駅から姫路城までの「大手前通り」そして「姫路城」のユニバーサルマップを制作し、発信されています。

バリアフリートイレの場所、車いすの貸し出しスポット、車いすでも入店できる食事処情報など、これはバリアフリーの見える化です。

このマップの素晴らしいところは、「ユニバーサルマップ移動編」に通常の観光マップでは表現しづらい城の急坂(バリア)など実際に車いすを押して上がる様子の動画データを張り付けてあることです。

行く前にマップで確認すれば、どれくらい急な坂があるか、何人くらいのサポートがあれば上がれるかが分かるバリアの見える化は全国の観光地でも参考になるはずです。

日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク

姫路ユニバーサルマップ(姫路ユニバーサルツーリズムセンター制作)

なぜバリアの見える化も必要なのか?

例えば、姫路城は急坂はあっても階段ではないので、「バリアフリー対応〇」という表示だけだったとします。

バリアフリーだと思って訪れる高齢者や障がい者は一律ではありません。高齢の奥さんが高齢のご主人の車いすを押す、単独で車いすを自走、車いすは使っていないけど杖を使う高齢者、重さ100㎏以上の電動車いす、お城まで来たけどその先には行けなかったということにつながるからです。

事前にどこまでがバリアフリーで、どこにバリアがあるかがわかることで旅行者が選択できることが重要です。

JINRIKI(車いすけん引装置)の活用

今回、私たちは姫路ユニバーサルツーリズムセンターが貸し出しをしている車いすけん引装置「JINRIKI」を活用しました。

2本の棒状の装置を車いすに取り付け、前をアジャスターで固定すると人力車のようになるという仕組みです。

慣れれば30秒ほどで取り付けられる装置ですが、前輪が浮くことで寺社仏閣の玉砂利、砂浜、雪上など本来車いすが不得意とするような場所も走行することができるほか、急坂も前を向いて景色を楽しみながら下りられます。

観光地のバリアフリー対応は、必ずしも高額な事業費をかけるバリアフリー改修だけではありません。観光でも使える福祉用具をうまく活用するだけで観光地の幅は大きく広がります。

WHILLで見学した「好古園」

姫路ユニバーサルツーリズムセンターでは、来年度からは「WHILL」(次世代型電動車椅子/近距離モビリティ)の貸し出しもスタートします。

JINRIKI

WHILL

兵庫県全域から集ったコンシェルジュの皆さんは、県内各所でこのようなユニバーサルツーリズムの推進に取り組んでおられます。2024年には「KOBE2024世界パラ陸上競技選手権大会」、2025年には「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が控え、国内外から多様な観光客が関西を訪れます。

その時、兵庫県は高齢や障がいがあっても「選ばれる」観光地になっていると感じました。

オフィス・フチ姫路視察レポート

寄稿者 渕山知弘(ふちやま・ともひろ)ユニバーサルツーリズム・アドバイザー / オフィス・フチ代表

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