「紀州うめどり」が復活 和歌山県のブランド鶏、梅酢活用の飼料で育てる

「紀州うめどり」を育てている鶏舎(和歌山県有田川町で)

 梅干しをつくる過程でできる梅酢を活用した飼料で育てた和歌山県のブランド鶏「紀州うめどり」が一時生産停止になっていたが、新たな事業者が生産に乗り出し、復活した。臭みのない高品質な鶏肉が特徴。今春から少しずつ流通しているが、今月中旬以降に本格的な出荷をし、流通量が増える見込みという。

 みなべ町の梅加工業、紀州ほそ川や県養鶏研究所が共同で梅酢の活用について研究し、不要な塩分を除去して有効成分を抽出したエキス「紀州梅そだち」を開発した。

 エキスを飼料に添加して育てることで、病気への抵抗力が高まり、生存率が向上。臭みが少なく、やわらかい肉質も特徴となっている。食肉産業展「地鶏・銘柄鶏食味コンテスト2008」では最優秀賞を受賞している。

 県の優良産品「プレミア和歌山」に認定され、生産者や関係事業者などでつくる「紀州うめどり・うめたまご協議会」が販売促進に取り組んできたが、2019年に委託先の生産や加工処理の事業者が経営破綻し、生産停止になった。

 その後、関係者が復活を模索する中で、新たな生産者として食用鶏生産を手がける「御坊チキン」(有田川町)の協力を得て、再び有田川町や日高町、広川町などの鶏舎で生産されるようになった。

 御坊チキン常務の古田雄也さん(32)は「梅酢を飼料に使い、鶏ふんも肥料として梅に還元することで資源を無駄にしない循環型農業を実現している。品質も良く、スタッフも愛情を込めて自信を持って育てている。まずは県内を中心に皆さんに親しんでいただき、一人でも多くの人に届けられるとうれしい」と話す。

 紀州うめどりに与える紀州梅そだちの製造会社「紀州ほそ川飼料」(みなべ町)社長で、紀州うめどり・うめたまご協議会会長を務める細川陽介さん(41)は、父が手がけた紀州うめどりの事業を引き継ぎたいという思いから、他業種から転職してUターンした。

 細川さんも「新たなメンバーによって、紀州うめどりがさらに良い品として届けられるようになった。ぜひ、皆さんに食べていただきたい」と話し、安定生産に取り組んでいくとしている。

© 株式会社紀伊民報