山下美月、アイドル活動が中心だからこそ「一つ一つの出会いが一生の財産に」――「下剋上球児」インタビュー

TBS系で放送中の連続ドラマ「下剋上球児」は、鈴木亮平さんが「日曜劇場」枠で約2年ぶり2度目の主演を務め、高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描くドリームヒューマンエンターテインメントです。

ここでは、兵頭功海さん演じる根室知廣の姉・柚希役の山下美月さんのインタビューをお届け。役作りでこだわっている点や撮影現場の様子、さらには、2度目の出演となる新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督作品でのエピソードを明かしてくれました。

――初めに、根室柚希の役柄を教えてください。

「弟の知廣が弱気でひょろひょろしているかわいらしい一面がある一方で、私が演じる柚希はハツラツとしているお姉ちゃんです。その裏には、両親を事故で亡くし、1人で家を支えていかなければならないという家庭環境の責任感があります。明るくちゃきちゃきと活動的なキャラクターになっています」

――演じる上で大切にしているところはどこですか?

「皆さんにかわいいなと思っていただけるような兄弟のやりとりを大切にしています。兵頭さんが実年齢では私の1個上で身長が高く、クランクイン前は私の方が妹に見えるのではないかと不安に思っていたので、お芝居ではいつもより勢いよくセリフを言うようにしたり、肩をバシバシたたかせてもらったりしています。兵頭さんが『頭とかも全然たたいてください!』と、こっそり言ってくださったのですが、身長が高過ぎて届かないんですよね(笑)」

――山下さんが感じる本作の魅力を教えてください。

「高校球児を題材にした作品なのでスポ根ドラマに見られがちかも知れませんが、ただそれだけではなく、球児を支える周りの大人たちが魅力的に奥深く描かれていると思います。私も甲子園を見る時は球児の皆さんを主役に見ていましたが、その裏には彼らを支える家族や先生方の奮闘があるんですよね。そういった部分でも人間味を感じる面白い作品になっています」

――本作の現場ならではだと感じることはありますか?

「前作でご一緒させていただいた時にも印象的だったのですが、塚原さんが『この現場はほぼテストやりません』と本読みの前におっしゃっていたのがとても記憶に残っています。瞬時に生み出されるものにリアリティーがあると現場にいて実感しますし、集中力を高めた状態で撮影に挑めています」

――アドリブなどはあるのでしょうか?

「台本が終わった後にも続くシーンはアドリブなのですが、三重弁が難しくて苦戦しています。以前、関西弁の役は演じたことがあるのですが、三重弁はまたちょっと違うんですよね。私の周りに三重県出身の知り合いがいなかったので、マネジャーさんにスタイリストさんを紹介してもらい練習していました」

――試合シーンの撮影には参加されましたか?

「私はまだ参加していないのですが(取材時)、野球の試合をどうやって撮るのだろうと楽しみにしています。球児の皆さんもたくさん練習していらっしゃって、本当にヒットを打つまでやるとも聞いているので、その熱量にきっと心を揺さぶられるだろうなと思います」

――では、球児の皆さんはどういった印象ですか?

「皆さん仲が良さそうで和気あいあいとしているので、本当に高校生の集まりを見ているようです。年齢的には年上の方も多く、同世代の方も多いはずなのですが、いい意味で年下に見えますし、空気感が本当の高校球児になっています」

「台本を読む時は、周りがどんなキャラクターなのかをしっかり考えるように」

――主演の鈴木さんと共演された印象をお聞かせください。

「鈴木さんはもともとすごくストイックで、お芝居に対して真摯(しんし)に向き合う方のイメージだったのですが、実際には、自分の想像を超えるぐらいお芝居に対して向き合っていらっしゃいました。“役に寄り添う”という言葉の方が適切かもしれません。ご自身のお芝居に対してはもちろんなのですが、ほかの登場人物の心情まで一緒に考えてくださって、作品に対して温かい気持ちを持って挑んでらっしゃる姿から勉強させていただいています」

――鈴木さんから直接アドバイスをもらう機会はありましたか?

「クランクインのシーンが根室家で、南雲(脩司)先生と2人でお話するシーンだったのですが、その時に、これから柚希を演じるにあたってのお姉ちゃん像を『僕はこう思っていて…』と一緒に考えてくださいました」

――役柄をつかめたと感じる瞬間はありますか?

「塚原さんの作品の作り方が影響していると思うのですが、本作ではどのキャストさんも会話のキャッチボールが一つ一つ決まっていなくて、すごく自然です。皆さん自由に動いて話しているので、私も『こういう役でいよう!』と意気込んで現場に入るのではなく、皆さんとしゃべっているだけで自然と役や作品の流れに乗れる感覚があります」

――役柄設定で気になった点はありましたか?

「趣味のところに『かき氷屋巡り』と書いてあったのが意外でした! 今どきなかわいらしい趣味でいいなと」

――役作りの際はそういった設定資料も見ながら想像されるのでしょうか?

「そうですね! もちろん自分の役作りもするのですが、台本を読む時には自分の役よりも、周りがどんなキャラクターなのかをしっかり考えるようにしています。柚希と南雲先生は台本上そこまで頻繁に会うわけではないのですが、すごくいい先生なので、柚希にとって顔を見ただけでどこか安心する存在。そういった相手に抱く第一印象からお芝居を考えるようにしています」

――衣装などはどういったところにこだわりが見られますか?

「根室家は貧しい家庭の設定なので、お洋服にも全然バリエーションがありません。私もほぼこの衣装しか着ていないくらいです。よく見るとシャツの袖に穴が開いていたり、知廣のズボンもボロボロになったりしていて、使い込まれているのが分かるようになっています。そういった細部にこだわられていて感動します」

「着飾る恋〜」以来の新井プロデューサー×塚原監督作品への出演

――本作が「日曜劇場」初出演ですよね。

「そうですね。でも、いい意味で日曜劇場だからと気負っていることはないかもしれません。アイドルを中心に活動しながらいろいろな仕事をさせていただいているからこそ、一つ一つの出会いが一生の財産になると感じていて、だからこそ、一度お会いした方とまたどこかの現場でご一緒することをモチベーションに、目の前のお仕事を頑張っています。塚原監督も新井プロデューサーも前作で大きな影響を与えてくださった方々なので、またいつか成長した姿で作品に2人に呼んでいただけるように頑張りたいという気持ちで励んでいました」

――塚原監督との再タッグはいかがですか?

「塚原さんとは約2年半ぶりにご一緒させていただきます。初めての時も現場で何を見たらいいかとか、台本はどう読んだらいいかというところから丁寧に教えてくださって、大変勉強になったことを覚えています。本作でも『このお芝居はもう少しハツラツにやってみた方がキャラが立つよ』などと個人のアドバイスもしてくださいますし、ほかのキャストの皆さんにアドバイスをされていることからも吸収することがたくさんあります」

――芝居に対する考えの変化もありましたか?

「コロナ禍に入り、約1年お芝居の仕事がほぼない状態が続いていて、そんな時に初めて連続ドラマに出演させていただいたのが『着飾る恋には理由があって』(同系)で、実は個人的にも再スタートの思いを込めていました。それまでは、アイドルとして活動している私がこんなそうそうたるキャストの皆さんの中にいて大丈夫なのかとネガティブに考えていましたし、自分のお芝居に対しても不安を持っていたのですが、当時、塚原さんが完パケのDVDと一緒に『このお芝居がすごく良かった』とか『この癖は直した方がいいかな』などとメッセージを書いてくださったんです。それが本当に愛情深く優しい言葉で、それを見てずっと泣いていたぐらい。それをきっかけに、あらためて純粋にお芝居を頑張りたいという気持ちを持つことができた気がしています」

――では、最後に視聴者へのメッセージをお願いいたします。

「本作はスケールが大きく、登場人物の皆さんもたくさん出てきます。クスッと笑える部分もありますし、台本を読んで人とのつながりや支え合いがどの場面においても重要なのだと感じたので、そんな人の温かさや人間らしいストーリーを、見てくださる皆さんにもたくさん受け取っていただけたらと思います!」

【プロフィール】

__山下美月(やました みづき)
__1999年7月26日生まれ。東京都出身。しし座。O型。乃木坂46の3期生オーデイションに合格し、2018年に「シンクロニシティ」で初の選抜入りを果たす。主な出演作は、映画「日日是好日」、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」、ドラマ「映像研には手を出すな!」(TBSほか)、「着飾る恋には理由があって」(TBS系)、「スタンドUPスタート」(フジテレビ系)、「さらば、佳き日」(テレビ東京ほか)など。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルとしても活躍中。

【番組情報】

「下剋上球児」
TBS系
日曜 午後9:00〜9:54

文/TBS担当 松村有咲

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