全寮制の中高一貫校“海陽学園”に密着 文化祭の演劇も“リーダー育成”の場だった 目標は「優勝、計画性、そして主体性」

愛知県蒲郡市の「海陽中等教育学校」。将来の日本のリーダー育成を掲げる、全寮制の中高一貫校です。

この学校で、毎年9月に開かれる文化祭の名物が“演劇”です。生徒が寮ごとに4チームに別れて優勝を争います。

もちろんこの演劇も、リーダーを育てるためのプログラムの一環。未来のリーダーを育てる現場に密着しました。

3年前に導入!リーダー育成のための「ディスカバリーメソッド」

5月、海陽中等教育学校で文化祭の打ち合わせが始まりました。しかし、少し変わっています。

(生徒たち)
「計画をよく立て、目先のことをよく考えることが大事」

「生徒が主体性を持って、自分から行動していかないと新しい成長が得られない」

彼らは4つある寮のうち「ハウスC」のグループです。話し合っていたのは具体的な劇の内容ではなく、抽象的な目標。

実は、これこそ学校側が最も重視している点です。

(海陽中等教育学校・武田眞史先生)
「ディスカバリーメソッドといいましてJAXAやNASAで宇宙飛行士を育てるために使われていたプログラムを教育用に組み直したものを海陽学園では使っている」

海陽学園が3年前に導入した「ディスカバリーメソッド」は、宇宙飛行士の訓練プログラムを元にしたもの。

リーダーシップやコミュニケーション能力、チームワークといった数字では測れない能力を伸ばすものです。

重要なのは41個のチェックポイント。「明確なゴールを示す」「責任を引き受ける」「建設的にフィードバックする」など、ミッション遂行に必要な項目があり、これが実践出来たかどうかをチェックします。

海陽学園では体育祭や文化祭など全ての学校行事に、このディスカバリーメソッドを導入。毎回各項目の達成度を評価しています。

(海陽中等教育学校・西村英明 校長)
「勉強や学力だけではなくて、非認知能力を育成していくことが大事。日本をけん引していくようなリーダーになってほしいので、非認知能力はしっかり身に付けてほしい」

スケジュールが間に合わない?初めてのリーダーに悪戦苦闘…。

ハウスCのグループの定めた目標は、「優勝」「計画性」そして「主体性」。監督を務めるのは3年生の右納雄太さんです。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「(Qみんなをまとめられそう?)気合いでなんとか。僕はあまり(リーダーの)経験をしたことがないので、トライしてみた」

これまで経験がなかったリーダーに、あえて挑戦しました。

9月初め、文化祭本番まであと1週間。本番前最後のリハーサルの日なのですが、ハウスCではセットや小道具は完成しておらず、衣装もまだ準備できていません。一応、形だけはリハーサルをしましたが…。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「周りを頼り切れてないというか、どうしても自分でやってしまう癖がある。考えてしまって、なかなか周りに意見を聞けない」

グループの目標に主体性を掲げたため、自主性に任せてしまったことが原因でした。

同じグループの生徒たちも、衣装や小道具が間に合わずスケジュール的に不安を隠せない様子です。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「(Q1週間前だけど勝てそう?)正直、自信はないです。ここを直せば良くなるという点が見えてないわけではないので、1週間でどこまで追えるかがポイントだと思う。そこを自分が追い切れれば勝てると思う」

本番当日!生徒自身が感じた“リーダーの資質”とは?

そして迎えた文化祭当日。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「あの後から結構必死に、夜の時間を使えるだけ使って、大道具はこの2日で急ピッチで完成させて、動きの確認も結構できた」

この1週間、遅れていたことで全員の主体性が発揮され、なんとか間に合にあいました。開演20分前、右納さんの提案で円陣を組むことになりました。

(円陣)
「みんなでやってやりましょう。今日は最高の劇にしましょう」

ここへ来て、リーダーらしさが見えてきた右納さん。

劇は人魚の子どもを育てた老父婦が、金に目がくらんで人魚を手放す童話をアレンジしました。音楽も自分たちで演奏します。

舞台袖から心配そうに見守る右納さん。目立ったミスもなく最後までやりきりました。他のハウスの劇も終わりいよいよ結果発表です。

(司会者)
「それでは点数発表です。第4位ハウスA、第3位ハウスI・J 、第2位ハウスB、そして第1位はハウスC。2023年度、海陽祭演劇の優勝はハウスCの皆さんです」

結果は、なんと優勝。仲間と喜びを分かち合います。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「やってやったぞっていう感じ。正直“終わりよければすべて良し”になってしまった」

と、すぐに反省の言葉が。

(海陽中等教育学校3年生・右納雄太さん)
「リーダーは正直言って難しかった。みんなの支えがなかったら本当にできなかった。支え合いで僕はリーダーをすることができた」

引っ張るだけでなく、全員の主体性を引き出すのもリーダーの重要な資質だと学んだ右納さんです。

後日、授業で書いた振り返りシートには「通過点」という文字が。若い世代が新しいリーダー像をどう描くのかに期待です。

CBCテレビ「チャント!」2023年10月30日放送より

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