リーマンショック・東北大震災・・・数々のダメージからの復活劇!

海の向こうで起きたことが・・・リーマンショック

2009年のリーマンショック時は、更なる景気の後退が起きることは予想できませんでした。周りに来期の景気落ち込みを懸念する声が上がっておりました。しかし、アメリカで起きたことがそこまで日本に影響するとは考えが及びませんでした。事実、2010年3月までは、少し持ち返していた好調な各事業部売上でした。それが、4月に入った途端、広告関連の仕事がピッタッと息を潜めて売上の柱にもなっていた撮影事業部が大ダメージを食らいました。その結果、1/3までに売上も落ち込み、世の中の景気感とも連動して、貸切パーティーの売上も徐々に響いて参りました。

建築途上のスカイツリーを愛でる・・・観光遊覧船の機運

まるでパナマ運河のよう、扇橋閘門(水門前)

建設途上のスカイツリーを愛でるツアー

ただ、幸いなことに少し前に始まった目黒川お花見クルーズの売上が年々厚みを増してきて、更に、はとバス様とのコラボでスタートした東京スカイツリーの建設途中を運河船で観に行くクルーズが大ヒットし、NHKの番組などでも取り上げられました。これは、江東区内を流れる内部河川と呼ばれる運河を航行し、扇橋閘門(おおぎばしこうもん)を通過する際に、約2mの水位落差を船に乗ったまま体験し、建設途中のスカイツリーをお膝元の横十間川まで進み、水面に映る逆さツリーなども楽しめました。他にも舟運観光の復活に向けて、運河や河川を中心に様々な社会実験やイベントなどが開かれて、観光遊覧船の需要が高まる機運が生まれてきました。

自前の料理部門の必要性

この頃の業務としての悩みは、船上パーティーやウェディングクルーズで提供する料理の内容に納得がいかないことでした。自社で製造部門を持っておらず、ケータリング会社や提携先のレストランから料理を船に運び、お客様に提供しておりました。しかし、先方の都合でシェフが交代することも度々あり、他にも経営方針の変更などで料理の質や量に大きなブレがありました。その都度お客様からお叱りを受け、私たちが確認できる範囲でも品質の変動でいつも悩まされていました。このビジネスを続ける上で、料理の製造を他人任せだけでは限界があることを痛感しておりました。

そんな時期に、お世話になっていた結婚式場を運営する「チャペルブレスアットオール」様が都合により弊社事業用桟橋「天王洲ヤマツピア」の隣接地に立つ「第三齋藤ビル」より全面移転されることになりました。ウェディング事業としては大きなマイナスになることですが、地主様から転居後に区割りしてテナント貸し出しをするので、利用しないかとご提案をいただきました。

チャンスをいかに生かしていくか・・・

これは、大変なチャンスが巡ってきたと感じ、飲食店の経験はほとんどない中で、思いの強さだけでレストラン事業に乗り出す決意をいたしました。いつかはその時が来ることをイメージして、少しは準備を進めておりましたが、いざその決意をした時、具体的なものが何も周りになく、一から手探りで創って行きました。幸い、シェフとホールを担当してくれる経験者が見つかり、周りの方に支えられてなんとか開業に向けて準備を進めました。

未曽有の災害が・・・東日本大震災

そんな中、あの大災害に見舞われました。2011.3.11、東北地方を襲った最大震度7の揺れと、その後に発生した大津波の大被害です。貨物船や漁船なども津波で流され、潮が引くとビルの屋上に船が取り残された映像も流れ、たくさんの方がお亡くなりになりました。悲惨な映像が毎日流れ、日本人は誰もが大変衝撃を受け、当面は海や川での観光やマリンレジャーなどからは国民の足が遠のくことが予想されました。

弊社でも直接的な被害こそ出ませんでしたが、社員たちの心情にも大きな影響があり、約半数が退社して東京近辺を離れ、地方や海外へ移住するなど環境の変化がありました。私もこの時は、「遂に会社が無くなるのだな」と、覚悟を決めました。ただでさえリーマンショックの影響から脱し切れていない中で、この状況はあまりにも過酷で、先を見渡す余裕もなく、ただただ自然の脅威に対して、無力なままでした。

自前のレストラン「キャプテンズワーフ」の開業

しかし、先ほどお話ししたレストラン「キャプテンズワーフ」の開業準備も進んでおり、いまさら止めることもできないまま、辛うじて2011年6月にオープンすることとなりました。一時はもうダメかなと諦めかけましたが、残ってくれた社員とその家族のことと、今まで支えてくださったお客様やお取引先のことなどを思うと、歯を食いしばって持ち堪えるしかないなと考え直し、懸命に再建への道を歩み始めました。

心を癒す観光コンテンツが次なる一手に!

幸いにも、震災直後だったお花見クルーズに関しては、思ったほど影響が及ばず、対前年比150%くらいで推移しました。恐らくですが、みなさま大きすぎるショックに見舞われ、お花見で少しは心を癒そうと考えられたのかなと、今では思っております。

一時は激減した売上も、夏頃には少しずつ戻ってくる兆候も見られ、大幅な経費の削減も相まってなんとか窮地を脱出することができました。2012年6月に予定される東京スカイツリーの開業に向けて、新たなプロジェクトも進んでおり、自分のモチベーションも高くキープすることができました。このようなことがキッカケで、未曽有の災害に見舞われたことによるダメージを払拭し、新たなステージに向けて歩み続けることができたのだと思います。

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 平野拓身(ひらの・たくみ)㈱ジール代表取締役社長

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