空き家活用へ特許 賃貸料と分割払い併用 茨城・日立の山側団地で再生事業 地元不動産業者

再活用に向けて改修工事が進む空き家=日立市内

空き家の有効活用につなげようと、茨城県日立市内の不動産業者が空き家の処理に関する特許を取得した。賃貸料と分割払いを併用した不動産取得のシステムで、居住者は一定額を決められた期間支払うことで所有権を取得できる。空き家の管理に困っている住民の需要に応えるため、市内の山側団地で再生事業に乗り出している。

特許を取得したのは同市金沢町の「優住館」(菊地恵子代表)。任意団体「地域再生推進協議会」を立ち上げ、1人暮らしのお年寄りの生活支援や、空き家対策にも取り組む。

市内の丘陵地では昭和40~60年代にかけて山側団地が整備され、団地の高齢化率(2022年3月時点)は50.8%と市平均を大きく上回る。山側団地全体ではすでに400戸近い空き家があり、高齢化の進展に伴い今後、急増する可能性がある。

特許は、建物を定期賃貸借した後に建物と土地を分割払いによって譲渡する際、家賃月額と分割額が同一となるよう計算するシステム。空き家の所有者は改修工事費などを考慮して家賃などを設定し、収益も比較できる。

同社によると、居住者は賃料相当額を一定期間払うことで支払い完了時には土地と建物の所有権を取得し、その後も住み続けることができる。管理に悩む所有者は改修にかかったローンや管理費を賄える家賃を設定した上で、最終的に不動産を手放すことができる利点がある。

同社がある金沢団地も1975年に完成し、高齢化率は5割を超えて近年は空き家が増加している。既にこの仕組みを使って団地内で空き家のリユース事業に乗り出しており、入居契約が決まった例も出てきている。

建築士会の会員とも連携し、空き家の劣化状況や欠陥の有無などを客観的に診断する仕組みも導入。特許はライセンス契約を結ぶことでほかの不動産や建築業者にも活用してもらいたい考え。

同社の黒瀧英俊さんは「負の財産になっている不動産を資産に変え、空き家の解消につなげたい。資材高で新築戸建ての価格は高騰が続いている。子育て世帯などに利用してもらえるとまちの活性化にもつながる」と話す。

© 株式会社茨城新聞社