ESAのユークリッド宇宙望遠鏡が撮影したオリオン座の「馬頭星雲」

こちらは「オリオン座」の方向約1375光年先にある有名な暗黒星雲「馬頭星雲(Horsehead Nebula)」とその周辺の様子です。画像の中央やや左下に写っている雲の形が馬の頭に似ていることから名付けられました。

【▲ 欧州宇宙機関(ESA)のEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡で撮影された「馬頭星雲」(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)】

暗黒星雲はガスと塵が高密度に集まっている天体です。向こう側にある天体から放射された可視光線を塵が遮り、地球からはその場所が暗く見えることから“暗黒”星雲と呼ばれています。オリオン座の方向には「オリオン座分子雲」と呼ばれる広大な星形成領域があり、馬頭星雲はその一部を成しています。

この画像はESAの「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」の「可視光観測装置(VIS)」と「近赤外線分光光度計(NISP)」で取得したデータをもとに作成されました。Euclidは可視光線だけでなく人の目では捉えられない赤外線の波長でも観測を行うため、画像の色はデータ取得時の波長に応じて着色されています(700nm付近を青、1.1μm付近を緑、1.7μm付近を赤で着色)。

“馬の頭”の背後を染める青い輝きは励起した水素ガスが放つ光で、本来であれば人の目には赤く見えます。その手前にある馬頭星雲も人の目には暗く見えるのですが、ここでは塵や分子ガスの豊富な領域が赤く着色されているため、まるで夕日に染まった大地にたたずむ赤毛の馬を思わせます。

2023年7月に打ち上げられたEuclid宇宙望遠鏡は、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫ることを目的に開発されました。数十億個の銀河の画像化を目指すEuclidの観測データをもとに、暗黒物質が形成したと考えられている宇宙の大規模構造に沿って分布する銀河の立体地図を作成することで、宇宙の膨張を加速させていると考えられている暗黒エネルギーについての理解も深まると期待されています。

冒頭の画像はEuclidミッションにおける初のフルカラー画像の一つとして、ESAから2023年11月7日付で公開されました。天文学者はEuclidの観測で得られたこの領域の新たなデータから、木星と同程度の質量がある形成途中の惑星や、恒星と惑星の中間的な性質を持つ褐色矮星、誕生したばかりの幼い星を発見することを望んでいるということです。

Source

  • ESA \- Euclid’s view of the Horsehead Nebula

文/sorae編集部

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