【漫画】記憶失った叔父さんと少女をつなぐ題名のない歌 「死んだら何も残らないのがこわい」の深い意味 作者語る

「死んだらなにも残らないのがこわい」という叔父さんから『題名のない歌』を教わった少女。大人へと成長した少女は、病気で記憶を失った叔父さんを見て悲しさを感じていた時、思わぬところからあの歌を耳にする。そして少女は、悲しみで一杯だった心に一筋の希望を感じる──少女と叔父さんとのやりとりの中で温かい気持ちがあふれる作品『無題の音楽』──

少女と叔父さんが歌を通じて心を温め合う本作を描いたのは、ミュージシャンや詩人としても活動していたという異色の漫画家、電気こうたろうさん(@gurigurisun)。エックス(旧Twitter)に作品が投稿されると、9万を越えるインプレッションを獲得すると共に、「心の琴線に触れる物語!」や「心にジーンとくる」など、涙なくしては読めない作品として好評を得た。

『無題の音楽』1-1

そこで今回は、作者である電気さんにインタビューを行い、創作の経緯や読みどころについて話を聞いた。また、本記事には特別に本作に加え、独特な作風で注目を集めた『人生で予想通りにいったことがないひとの話』も掲載する。

どんな形でも心に残れば、きっと素晴らしい

気軽に読めるライトエッセイ系の作品が多いSNS漫画の中で、異例ばメッセージ性が強い本作は、友人へのエールとして描いたのがきっかけだと話す。

『無題の音楽』1-2

「この作品を描くきっかけは2つあります。ひとつは、何をやっても上手くいかないなぁと思って創作している自分自身のこと。それと、ミュージシャンの友人に向けて描きたいなぁと思ったからです。自信がなくなって落ち込むこともあるのですが、いつか必ず“しっくりくる日がくる”ことを信じて描きました」

『無題の音楽』1-3

そして、この作品を通じて伝えたいと思ったのが、冒頭の「死んだらなにも残らないのがこわい」という叔父さんのセリフへのアンサーとなる思いだという。

『無題の音楽』1-4

「どんな形であれ、誰かのこころに少しでも残れば、『それはきっと素晴らしいことだよね』という想いで主役の叔父さんが生きていること。それが、この作品で読み取ってほしい部分ですね」

『無題の音楽』1-5

本作と同じく、「何をやっても思い通りにならない」ことをテーマにした作品『人生で予想通りにいったことがないひとの話』についても、自身の思いを色濃く反映しているとか。

『無題の音楽』1-6

「この作品もまた、ぼく自身のことになるのですが、思い通りにコトが運んだことがすごーく少なくていつもおかしいことになるんです。だから、先を予想したりすると気持ちがおかしくなってしまうので悩んでいたのですが……こういうオチにすることによって、『まぁまぁ仕方ないけどやってくしかないよね』って気持ちになるところがこの作品の読みどころです」

『無題の音楽』1-7

今後描きたいテーマについては、「人間のみっともなさや苦しさ、それに対する祈りです。 それがなによりもうつくしいと思うからです」と語る、電気さん。読めば読むほど励まされているような気持ちになる本作。気持ちが落ち込んでいる時ほど読みたくなる作品を、これからも描き続けてほしい。

<電気こうたろうさんInformation>
■エックス /
https://x.gd/1Ro9r

■note /
https://note.com/ie_nekozou/

(よろず~ニュース特約・橋本未来)

© 株式会社神戸新聞社