「こんな天海祐希、初めてかも」注目作で魅せたブラックな顔

女優の天海祐希が、英国のダンサー&俳優のアダム・クーパーと組んだ主演舞台『レイディマクベス』京都公演が、11月16日に開幕。王座を狙って様々な人を犠牲にするという、これまで見たことのないような「ブラック天海」の姿に、満員の客席は終始緊張した空気に包まれた。

舞台『レイディマクベス』より、主演の天海祐希とアダム・クーパー(写真/阿部章仁)

■ いつも「真っ直ぐ」な天海祐希が・・・豹変?

シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』に登場する野心的な妻・マクベス夫人を、原作のスコットランドではなく、10年以上戦争の絶えない架空の国で生きる女性にした本作。かつては優れた兵士として、夫・マクベス(クーパー)とともに数々の功績を上げたレイディマクベス。娘(吉川愛)の出産をきっかけに一線から身を引いていたが、国王・ダンカン(栗原英雄)の後継者候補にマクベスが上がったことから、王位を夢見るように。さらに3人の亡霊たちから謎めいた予言を告げられ、その夢を現実にしようと動き出す・・・。

舞台『レイディマクベス』(写真/阿部章仁)

どちらかというと、誰もが共感するような「正義」を貫き、悪をスカッと成敗するというイメージが強い天海だが、今回演じるレイディは己の欲望のためにひたすら突っ走るタイプ。崇高な信念を持ってはいるけど、それを実現するためには人殺しすらいとわない。夫のマクベスに対しても、献身的な愛情を注ぐ一方で、自分の理想通りに動かないことで思わぬ行動に出る。これほど冷徹で残酷な、ブラックな天海祐希は今まで観たことがなかった。

■ お相手・クーパーとのダンスシーンは瞬き厳禁

注目のアダム・クーパーは、やはり日本語の台詞は非常に少なかったが、その分心身ともに傷ついた兵士の姿を、バレエ仕込みの繊細な身体表現で見事に体現。なによりもカリスマ性にあふれた立ち姿は、レイディならずとも「この人のためなら命をかけられる」という説得力にあふれていて、やはりこの役はクーパーでなくてはならなかったと納得させられた。ほんの少しだけ天海とのダンスシーンがあったのも眼福だったが、本当に「ほんの少し」だったのがちょっぴり残念だったかも。

舞台『レイディマクベス』より(写真/阿部章仁)

確かに善人とは言い難いレイディだけど、男性も抱きそうな野心を女性が持ったらなぜ「悪」になるのか? という疑問や、出産でキャリアをあきらめざるを得なかったという、その反動から極端な思考になったのかも・・・という同情も感じる。ただの「悪女」だとはおそらく誰も断言できない、非常に多面的な女性像を見事に体現した天海。世界初演というプレミア感も合わせて、ぜひその目に焼き付けてほしい。

舞台『レイディマクベス』より(写真/阿部章仁)

ほかには鈴木保奈美、要潤、宮下今日子が出演。脚本は英国で注目されている作家のジュード・クリスチャン、演出はウィル・タケットが担当。京都公演は11月27日まで「京都劇場」(京都市下京区)にて。チケットはS席1万3800円ほか、前売券は完売。当日券・キャンセル待ちの案内は公式サイトでご確認を。

文/吉永美和子

舞台『レイディマクベス』

期間:2023年11月16(木)〜27日(月)
会場:京都劇場(京都府京都市下京区東塩小路町901)
料金:S席1万3800円、A席1万2800円

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