寒い季節に増える『犬の病気』5選 主な初期症状と予防策に「人間と同じ」「油断禁物」

1.関節の疾患

寒さによる運動不足や、血流が滞ることにより関節に痛みがでる場合があります。冬になると、人間でも膝や手首が痛くなる方もいますよね。

寒さによって縮こまった筋肉やじん帯を動かすときに、痛みが生じるのです。犬の場合、具体的には骨関節疾患やヘルニアに注意が必要です。

犬は関節の痛みがあると散歩を嫌がるようになったり、飼い主さんが足を触ると鳴いたり唸ったりします。足を引きずるような仕草を見せる場合もあります。

対策として、滑りやすい床材にはカーペットを敷くなど対策をしましょう。フローリングだと踏ん張りがきかず、犬の足腰に負担がかかります。また、肥満も大敵です。標準体重をオーバーしていると関節に負荷がかかります。定期的に健康診断を受けるのも良いですね。

2.泌尿器系の疾患

水を飲む量が減る冬に発症しやすいのが、膀胱炎や結石などの泌尿器系のトラブルです。

犬にとっておしっこは、体内の水分量を一定に保ったり、老廃物を排出するなどの重要な役割があります。そのため、泌尿器疾患によりおしっこが作られない、うまく排泄できなくなると生命を脅かすような深刻な事態にもなりかねません。

気を付けるべき症状は、おしっこの色や回数がいつもと変わりないか、という点です。とくに血尿が出ていたり、おしっこの回数が極端に多い場合は要注意です。さらに、飲水量も気にかけて見てあげましょう。

ここで大切なことは、犬に適正量のお水を飲ませることです。寒さや運動不足からなかなかお水を飲まない子には、ドライフードにささみのゆで汁をかける、ヨーグルトを水で薄めて与えるなどの方法を試してみてください。美味しそうなニオイで、飲水量が増えることが期待できます。

3.心臓病

寒くなると体が冷えて血管が収縮し、血圧が上がります。そうすると、いつも以上に心臓が働き何倍もの負担をかけることになります。

蓋の役割をしている弁が機能しなくなり、逆流することで心臓にトラブルを起こす「僧帽弁閉鎖不全症」が、この時期の犬に最も多い心臓病です。

代表的な初期症状は咳です。苦しそうな乾いた咳が続くようなら要注意です。また、散歩を嫌がったりすぐに疲れてしまうという症状があらわれます。

寒暖差が心臓に負担をかけてしまうので、暖かい室内から急に気温の低い外に心臓病の疑いのある犬を連れて出ることはやめましょう。散歩の前に家で遊んで身体を温める、防寒服を着せるなどの対策がおすすめです。また、塩分過多にも気を付けて下さい。

4.伝染病

冬はたくさんのウイルスが活発に動く季節です。予防接種をしているからといって油断は禁物なのです。乾燥した空気中には多くのウイルスが飛散しています。ケンネルコフやパルボウイルスが代表的な伝染病です。

子犬が咳やくしゃみをしている場合はケンネルコフを疑います。元気がない、下痢・嘔吐というような症状の場合、パルボウイルスを発症しているかもしれません。また、発熱や食欲不振が、感染症の特徴的な初期症状です。

大前提として、年に一度の予防接種は必ず受けましょう。狂犬病ワクチンのほか、混合ワクチンはさまざまな病気の予防として効果を発揮します。また、免疫力アップのためにバランスの良い食事と適度な運動は欠かせません。

5.呼吸器系の疾患

冬は気温・湿度ともに低いため、外からの刺激に対する抵抗力が弱まる季節です。

チワワやパグなどは寒さに弱いため、特に寒い季節には注意が必要です。肺炎や細菌・ウイルスによる気管支炎を引き起こしやすくなるからです。

分かりやすい初期症状として咳が頻発するようになります。「カッカッ」と喉に何か詰まったような咳は肺炎の疑いがあります。「ガーガー」と苦しそうな激しい咳は気管虚脱かもしれません。

乾燥対策として加湿器を使い、部屋の湿度を適切に保ちましょう。加えて、細菌やウイルスは閉めきった部屋に充満しているので、ときどき窓を開けて部屋の換気をよくすることも大切です。喉を湿らすために、愛犬が冷たすぎない水を常に飲めるようにしてください。

まとめ

気温・湿度ともに低くなる冬は、犬も健康トラブルが起きやすい季節です。

愛犬の水分補給や部屋の温度を保つなど、まずは基本を徹底することが大切です。さらに、栄養バランスのとれた食事と適度な運動で、病気に対する抵抗力を高めましょう。

規則正しい生活を送り、愛犬の小さな変化やサインに気づいてあげられるよう、より密にコミュニケーションをとって過ごしてくださいね。

(獣医師監修:寺脇寛子)

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