「自分を信じて」振り切った1W 杉浦悠太が緊張と戦った18ホール

高校の同級生キャディと優勝を喜び合った(撮影/松本朝子)

◇国内男子◇ダンロップフェニックストーナメント 最終日(19日)◇フェニックスCC(宮崎)◇7042yd(パー71)◇晴れ(観衆6865人)

杉浦悠太(日大)が13番ティでスコアボードを確認すると、4打あったはずのリードは半分に縮まっていた。残り5ホール、後続には蝉川泰果や中島啓太らが控えている。「緊張しているつもりはないけど、朝ごはんも入っていかない」と身体が無意識に感じていたプレッシャーは、とっくに最高潮に達していた。

それでも、「一番狭いホールだと思っていた」と警戒していた14番で、迷わずドライバーを振り切った。「調子がいいのは、間違いない」。緊張に負けない自信は確かにあった。

アマチュアとして迎える、最後のプロトーナメント。今週は「後悔しない攻め方を」とドライバーを振り切ることをテーマに連日スコアを伸ばしたが、単独首位で迎えた最終日は同じようにはいかなかった。

そう簡単に行かせてくれない最終日(撮影/松本朝子)

1番でドライバーショットを左に曲げ、第2打は木の間を通さなければいけないトラブルショット。3オン2パットのボギー発進に「スタートから、そんなにうまく行かないんだな」とため息が漏れた。「4打差あったので、それが自分を落ち着かせてくれた」と2番のティショットはファウェイを捉えて持ち直したが、その後も危うい場面は何度もあった。

4打差をキープして迎えた後半で、最大のピンチがやってくる。11番(パー3)は「力んでしまった」とティショットをグリーン奥に外し、2打目も乗らず3オン2パットのダブルボギー。12番は3パットを叩いてボギーと、連続でスコアを落とした。

2組前でチャージをかけた蝉川泰果が2打差に迫る中、「自分を信じて打つことだけを考えた」と、14番でも握ったのはドライバー。左のラフに入ったが、4m前後に乗せて2パットでしのぎ、ようやく気持ちが少し落ち着いた。

朝ごはんも喉を通らない緊張との戦い(撮影/松本朝子)

16番で1mに乗せてバーディを奪い、18番(パー5)に入った時点で通算11アンダー。蝉川が9アンダーでプレーを終えていたが、「何が起こるか分からない、ちょっとしたことで簡単に逆転になってしまう」と最後まで気を緩めることはなかった。

ドライバーショットはラフに入れたが、2打目でグリーン手前のラフまで運んで1mに3オン。ここでようやく勝利を確信し、バーディパットを沈めると両手を挙げてこぶしを握った。

自信を持ってドライバーを振り切った(撮影/松本朝子)

「本当に、勝ったんだ」とツアー史上7人目のアマチュア優勝を果たし、大会を終えてすぐにプロ宣言。2週後には来季のツアー出場を目指して予選会に出場するつもりでいたが、この優勝で2025年までの出場権を獲得した。

プロとしての初戦は、次週「カシオワールドオープン」になる予定。目指すプロの姿を問われると、今週出場していた松山英樹や、同組で回った中島啓太が思い浮かぶ。「ギャラリーの数が本当にすごい。応援してもらえるゴルファーになりたい」とはにかんだ。(宮崎市/谷口愛純)

史上7人目のアマチュア優勝を遂げた(撮影/松本朝子)

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