【MLB】 4年間でプレーオフ1回…編成トップ交代でレッドソックスは生まれ変わるか|2023シーズンレビュー レッドソックス編

写真:レッドソックスで1年目を終えた吉田正尚©Getty Images

【チーム成績】
78勝84敗 勝率.481 ア・リーグ東地区最下位

◆打撃
打率 .258(6位)
OPS .748(9位)
本塁打 182(18位)
盗塁 112(17位)
WAR 13.6(22位)

◆投球
先発防御率 4.68(22位)
救援防御率 4.32(20位)
奪三振率 8.96(13位)
与四球率 3.13(12位)
WAR 13.8(20位)

2年連続の74勝、そして地区最下位。ひときわレベルの高いア・リーグ東地区に身を置くとはいえど、その結果は容認できるものではなかったのだろう。

シーズン終了を待たずして編成トップのハイム・ブルームを解任したことが、それをよく表している。

ブルーム時代の4年間は結局、1回のプレーオフ出場のみにとどまった。レイズから招聘されたブルームは、レイズのように低予算で勝てるチーム作りを求められていたのだろう。レッドソックスという本来は資金力ある球団に身を置きながら、予算的制約が存在していることが見え隠れするトランザクションが多かったという印象だ。ブルームの最初の仕事は契約延長に失敗したスーパースター、ムーキー・ベッツのトレードだった。

ベッツほどの選手に見合う対価はありえないとはいえ、ベッツの交換要員からはアレックス・バーデューゴが平均的なレギュラーになっただけ(そしてバーデューゴは来年でFA)。さらにパドレスに破格の契約を提示されてしまったとはいえど、生え抜きスターのザンダー・ボガーツの流出も許した。

“出し渋った“ようにも取れる生え抜きスターに対する処断は今のところ、上手くいっているようには見えない。そして出し渋りはそれにとどまらず、FA・トレード補強は小粒なものに終始した。

今シーズンは7月に大きく勝ち越してプレーオフの可能性も見えていたが、トレードは内野手ルイス・ウリアスを獲得した小規模な1件のみ。補強ポイントと言われていた投手陣に補強はなく、あえなく失速した。

そして、ここぞというところで財布の紐を緩めた大型契約も今のところハマっていないのが痛いところだ。ボガーツ流出に備える意味もあっただろうトレバー・ストーリーとの6年1億4000万ドルの契約も、ストーリーは最初の2シーズンで143試合の出場にとどまっており、成績も奮わない。

ライバル球団に2000万ドルもの差をつけ、5年9000万ドルで迎えた吉田正尚も、懸念の守備の拙さが露呈しているという現状。期待されていた打力も後半戦に失速し、守備の悪さを補えておらず、とうてい契約には見合っていない。

しかし、ブルーム時代の遺産も少なからずある。

ブルームは有効な補強こそ出来なかったかもしれないが、その分で中長期的な視野に立った経営に務め、デプス強化と育成にリソースを注いだ。贅沢税のペナルティはリセットされ、チームの不良債権は今やクリス・セール(残り1年)のみに。ベッツ、ボガーツらの流出は許したが、ラファエル・デバースとの契約延長には成功し、チームの核(コア)を確保した。

そして、デバースに続くことが期待される若く楽しみな才能も、続々と芽を出している。

筆頭格は新人王投票3位に入った23歳のトリストン・カサスだろう。当初は苦しんだカサスだったが、7月に打率.347・7本塁打と一気に覚醒した。さらにジャレン・デュランも急成長を見せ、1番センターに定着。日本から獲得した吉田正尚も、シーズンのほとんどを打率3割オーバーで過ごし、来季以降の本格適応へと希望を見せた。

そのほかにもセダン・ラファエラ、ウィルヤー・アブレイユ、デビッド・ハミルトンら、定着の可能性を秘めた若手野手が続々と登場した。

課題とされているのは、ディフェンスだ。上記のシーズン成績で防御率・WARが20位台をさまよっていることから分かる通り、投手陣は精彩を欠いた。

ブルーム時代からドラフトの上位指名権・海外FAでの多額の投資を行い、それが実を結びつつある野手育成とは対照的に、投手に目立った有望株(プロスペクト)はいない。

24歳のブレイヤン・ベヨが進歩を見せ、後半戦からはニック・ピベッタとカッター・クロフォードが持ち直してきたのは好材料だ。しかし、上を目指すならば、やはりローテーションの軸となる投手が欲しいところだ。

強豪復活のため、レッドソックスはこのオフどう動くか。

まず、ブルームを解任したあとの後任探しは、大いに難航した。

ブルームは4年足らずで、さらにその前任であるデーブ・ドンブロウスキとベン・チェリントンは世界一を達成しながらも、結果が出なくなったらスケープゴート的に球団を追われた。特にブルームは、限られた予算で中長期的な運営を担っていたものの、契約半ばで成績不振によってクビを切られてしまった。

元マーリンズのキム・アング、元アストロズのジェームズ・クリックをはじめとするエグゼクティブ候補に、レッドソックスの編成トップという安定しない職が敬遠されるのも無理はないだろう。

その中で後任を託された球団OBのクレイグ・ブレスロウはどのような編成を見せるのか。カブスでは投手育成に大きな貢献を残したブレスロウの就任によって、投手力の蘇生を目指したいところだろう。

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