神戸マラソン出場決定の直後、天国から「手紙」…亡き母を思い、父娘が涙のゴール

父と娘、2人でたどり着いたフィニッシュ。万感の思いをにじませる畑中昌彦さん(左)と希ララさん=19日午後、神戸市中央区(撮影・小林良多)

 新型コロナウイルス禍を経て、4年ぶりの通常開催となった神戸マラソン2023(神戸新聞社など共催)。今年は海外在住者も参加し、声出し応援やイベントが再開して沿道に活気が戻った。駆け抜けた約2万人のランナーも、大会を支え応援する人も、分かち合う思いがあった。ありがとう-。

■長年の夢

 「人生で一番心に残る大会になりました」。マラソン歴15年の畑中昌彦さん(51)=西宮市=は、初挑戦で完走した長女希(き)ララさん(24)=神戸市中央区=と喜びを分かち合った。

 今年3月、社会人1年目を終えた希ララさんがつぶやいた。「私もマラソン走ってみたい」。50歳を超えても走り続ける父の姿に、同じ社会人として憧れた。

 昌彦さんは驚いた。長年夢見ていたが、誘うには気が引ける長い距離。「娘から言い出してくれるのをずっと待っていた」という。

■「時空レター」

 神戸マラソンを初舞台に決めてすぐ、またしても驚くような出来事が起きた。

 7月、昌彦さんの元に一通の手紙が届いた。差出人は5月に77歳で亡くなった昌彦さんの母和子さん。2013年に神戸新聞が企画した未来へ送る手紙「時空レター」だった。

 沿道からの応援を楽しみにしていた和子さんの手紙には、こう書かれていた。

 「昌彦、10年後もマラソンやってるかな。元気で生きていれば、つえをついてでも応援に行きます」

 10年後、6時間超でゴールする昌彦さんの隣には、希ララさんの姿が-。

 「娘が本当に頑張ってくれた」「父のすごさを思い知った」と涙ながらにたたえ合った2人。天国からエールを送った和子さんも、満面の笑みを浮かべているはずだ。(小野坂海斗)

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