両脚に障害も甲子園目指し、車いすで野球名門高受験 かなわぬ夢を今、パラリンピックに追い求める26歳の挑戦 兵庫

日野雄貴さん

■パラ・パワーリフティング選手 日野雄貴さん(26)=兵庫県加古川市

 もともとは甲子園に憧れた野球少年。生まれつき両脚のすねの骨が1本ずつしかない障害を抱えながら、出身の徳島県吉野川市で、幼い頃から脚に装具を着けて、ひたむきに白球を追った。

 少年野球ではエースで5番を打ち、中学では4番打者。将来を嘱望されたが、担当医からは「中3で野球が終わったら手術しよう」と言われていた。成長に合わせて骨を伸ばす手術を受け、車いすで受けた野球名門高のスポーツ推薦試験は不合格だった。

 入学した公立高では、プレーしたい思いを抑えられず、医師から止められていた練習に加わって、脚を痛めた。高校1年の6月に再び手術。わずかにつなぎとめていた甲子園への夢は、完全に断たれた。「落ち込んで、野球道具を見たくもなかった」

 それでも神戸市の身障者野球の強豪チーム「神戸コスモス」の存在を知り、16歳で入団。徳島から毎週約1時間半かけて練習に通った。

 パワーリフティングとの出合いは2021年、野球のトレーニングで兵庫県三木市のジムに通っていた時だった。東京パラリンピックのテレビ中継で、ベンチプレス台にあおむけになってバーベルを挙げる選手を見て「自分もパラ大会に出られるかも」と思った。

 同年9月、同県姫路市のジムに入会。同11月の記録会では、全日本選手権の参加標準記録を挙げられなかった。「気持ちが甘かったと気付いた」

 野球との両立を断念。毎日、パワーリフティングのことを考え、食事、睡眠から見直した。23年1月の全日本選手権では、エリート部門(15歳以上)の72キロ級で135キロを挙げて3位に。その後の大会でも自己記録を更新した。

 目標は28年ロサンゼルスパラリンピック出場。「自分が活躍すれば、いま心がくじけている人も、いつか頑張れるとメッセージを送れる」。挫折した経験があるからこそ、高みを目指せることを証明するつもりだ。(斉藤正志)

© 株式会社神戸新聞社