カーボンニュートラル実現に向けた国内のエネルギー・フロー変革状況調査を実施(2023年)~国内の最終エネルギー消費の市場規模は、2023年度の13,010PJ、51.6兆円から2050年度には9,010PJ、48.0兆円と省エネ対策が進展して減少を予測、エネルギー平均単価は2023年度の3.97円/MJから、2050年度には5.33円/MJと高価格化が避けられない見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度(中間目標)、2050年度(最終目標)に国内のエネルギー・バランス・フローが大きく変革する状況について調査・分析した。ここでは、国内のエネルギー供給事業の市場規模予測(エネルギー量、金額)について、公表する。

1.市場概況

2050年カーボンニュートラル実現のために、我が国ではエネルギーの脱炭素化が要求されている。現状、CO2を排出しない一次エネルギー(天然の状態で採取されたエネルギー源)は、原子力発電と再生可能エネルギーであり、カーボンニュートラルのためにはこれらの導入拡大が必要である。

これに対して、CO2を排出する化石燃料を使う場合には、製造時や使用・転換時に排出されるCO2を回収して、地中貯留する(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)か、再利用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)して脱炭素化する必要がある(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)。
一方で、再生可能エネルギーを利用して製造するグリーン水素・グリーンアンモニアや、CCUSで化石燃料を脱炭素化して製造するブルー水素・ブルーアンモニアは、新たな脱炭素エネルギーとなる。また、グリーン水素やブルー水素を使用して、脱炭素の合成燃料や合成原料を製造できる。
カーボンニュートラルのためには、今後、上記のカーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)と、それらをエネルギー源とする発電電力が使用されていくことになる。特に、脱炭素化された電力を最終エネルギー消費に多く適用出来れば、より多くの需要分野を脱炭素化できる。

カーボンニュートラルに伴って、国内のエネルギー・バランス・フロー(一次エネルギー、二次エネルギー、最終エネルギー消費)は、既存のエネルギー源に対して、新たに水素やアンモニア、合成燃料等が組み込まれて大きく変革されることになる。

2.将来展望

今後、2050年カーボンニュートラル実現のために、省エネ対策が進むとともに、カーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)と、それらをエネルギー源とする発電電力が使用されていくことから、国内の一次エネルギー供給の市場規模(エネルギー量ベース)は、2023年度の19,630PJ※から2030年度に17,020PJ、2050年度には16,000 PJになると予測する。また、金額ベースの市場は、2023年度の35.3兆円から2030年度は30.2兆円、2050年度には21.8兆円になると予測する。カーボンニュートラルに向けて国内の省エネ対策が着実に進むことで、一次エネルギー供給量は大きく減少する見通しである。

一方、最終エネルギー消費の市場規模(エネルギー量ベース)は、2023年度の13,010 PJから2030年度に10,550PJ、2050年度には9,010PJになると予測する。また、金額ベースの市場は、2023年度の51.6兆円から2030年度は44.0兆円、2050年度には48.0兆円になると予測する。最終エネルギー消費量は、先ず2023年度から2030年度まで省エネ効果が大きく、その後2050年度に向けても、省エネ効果により減少する見通しである。

この間に、水素やアンモニア、その他各種カーボンニュートラル燃料の市場導入量が拡大することにより、エネルギー・バランス・フローにおいて相対的に多くのエネルギー転換プロセスが導入される見込みである。これにより、最終エネルギー消費時点におけるエネルギー平均単価は、2023年度の3.97円/MJ※から、2030年度に4.17円/MJ、2050年度には5.33円/MJに増大する見通しとなる。平均単価の上昇を抑制するためには、一次エネルギー供給時点のエネルギー平均単価を下げていかなければならない。

※PJ(ペタジュール)=10の15乗J(ジュール)、MJ(メガジュール)=10の6乗J(ジュール)

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