8年ぶりの「雨乞」へ…4年に1度、前回は新型コロナで中止に 来夏の「脚折雨乞」向け、鶴ケ島で麦の種まき

麦の種まきをする脚折雨乞行事保存会のメンバーら=18日、埼玉県鶴ケ島市三ツ木

 江戸時代から埼玉県鶴ケ島市に伝わる国選択無形民俗文化財の脚折雨乞(すねおりあまごい)に向けた準備が始まり、龍蛇(りゅうだ)の材料として使う麦の種まきが18日、同市内で行われた。4年に1度の行事は、前回2020年に催される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため中止。8年ぶりの祭りは、来年8月4日に開かれる。

 雨乞はかつて、雨が少ない脚折地区の農民らが、干ばつの夏に実施していた。農家の減少などで一時途絶えたものの、1975年に脚折雨乞行事保存会が結成され、翌76年に復活。以降は夏季五輪のある年ごとに行ってきた。

 麦わらと孟宗竹で製作する龍蛇は長さ36メートル、重さ約3トンもある巨大なもの。300人ほどの男たちが担いで市内を練り歩き、雷電池(かんだちがいけ)に着くと入魂の儀で龍神となる。男衆は龍神と共に池へ入り、雨を祈願。儀式が済むと解体される。

 種まきには、保存会のメンバーら44人が参加。脚折地区や周辺にある畑3カ所で、作業を行った。耕作面積は計6千平方メートルほどで、小麦の種40キロを掘られた畝にまき、肥料を施した後、足で土をかけて埋めていく。前回も19年秋にこの作業をして麦を育てていたが、翌年4月に中止が決定。保存会の平野行男会長(75)は「復活してからは、できなかったことは一度もなかったので、とても残念だった。まだ楽観はできないけれど、来年こそは何とか無事に終えられればいい」と願う。

 竹を12月に切り出すほか、冬の間には麦踏みを3回実施。来年5月末から6月初旬ごろ麦を刈り取り、7月下旬には龍蛇を作る。今回の参加者で最年長の佐々木久光さん(86)は「いい天気で、気持ちよくできた。今後の作業も出るつもり」と意欲満々。初めて準備から携わる村田孝太郎さん(50)は「若い人が少なく、伝統を守るのは難しい。でも、鶴ケ島のシンボルとなる祭りだから、続けていければ」と将来を見据えた。

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