決勝10位のマルティン、後退の原因をリヤタイヤと説明。「まるでウエットコンディション」/第19戦カタールGP

 2023年シーズンのチャンピオン争いは、まさに佳境を迎えている。ランキングトップは2022年シーズン王者のフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)、追随するランキング2番手はホルヘ・マルティン(プリーマ・プラマック・レーシング)だ。

 カタールGPの決勝レースを終えて、二人のポイント差は21に広がっていた。ここに、コース上のバトルは起こらなかった。

 バニャイアとチャンピオン争いを繰り広げているマルティンは、土曜日のスプリントレースで優勝を飾っていた。その走りはタイトル獲得に向けた意志が感じられる激しいものだった。マルティンが優勝、バニャイアが5位というスプリントレースの結果により、二人の差は7ポイントにまで縮まっていた。この時点で、ポイント差により、MotoGPクラスのチャンピオン争いは最終戦に持ち越されることが確定している。

 だが、日曜日のマルティンの走りは精彩を欠いた。5番グリッドからのスタートでリヤタイヤを激しくスピンさせて出遅れ、8番手に後退。中団でポジション争いを展開しながら周回を重ねた。マルティンのペースはファビオ・ディ・ジャンアントニオ(グレシーニ・レーシングMotoGP)やバニャイア、ルカ・マリーニ(ムーニーVR46レーシングチーム)などの上位陣に比べて明らかに遅かった。バトルをしていたからペースが落ちた、というよりもペースが上がらないために防戦一方になった、という見方が正しいだろう。

 マルティンはそのままずるずるとポジションを落とした。バニャイアは2位でチェッカーを受け、マルティンは10秒以上遅れて10位でゴールした。チャンピオンシップにおける二人の差は大きく広がり、21ポイントとなったのである。

 なぜ、マルティンは優勝争いに絡むことができず、後退を余儀なくされたのか。レース後、MotoGP.comのインタビューに対し、マルティンはタイヤが原因だったと語った。

「スタートで大きくスピンしてしまった。リヤタイヤが、ちゃんと機能していなかったんだ。だめなタイヤに当たってチャンピオンシップが決まってしまうなんて、本当に残念だよ。でも、これが僕に起こったことだ。残念だけど、仕方がない」

「リヤグリップがなくて、すごく苦しんだよ。バイクは止められないし、旋回もできない。スロットルも開けられない。まるでウエットコンディションみたいだったんだ。経験を生かして何ポイントかは取れたけど、大変だった」

 2023年シーズンは、1戦にスプリントレースと決勝レースが開催されるため、最大で37ポイント(スプリントレース優勝者12ポイント、決勝レース優勝者25ポイント)を獲得することができる。とはいえ、残り1戦で21ポイント差というギャップは、とても大きい。

「バレンシアで何か起こることもある。ペコがミスをするかもしれないし、僕が2レースで優勝するかもしれない。もちろん、今日みたいなタイヤじゃなければね。勝てるポテンシャルはあると思う」

「ちょっと悔しいけど、コース上で負けたんじゃない。コースの外でやられたんだ」と、マルティンは言った。選手同士が争うスポーツにおいて、外的要因が最終局面を大きく左右するのは──例え、チャンピオンを獲得するには運を含めた何もかもがそろわなくてはならないとしても──、全く望ましい状況ではない。

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