「GT7」大型アップデート“Spec II”をレビュー!AIである“GTソフィー”との対戦や新登場のスノーコース、マスターライセンスなどボリューム満点

PS5/PS4向けに発売中の「グランツーリスモ7」(以下、GT7)において、2023年11月2日に配信された大型アップデートの“Spec IIアップデート(1.40)”のレビューをお届けする。

本アップデートでは、新しい車やコースをはじめ、さまざまな要素が盛り込まれている。詳細は以下の記事にて参照できる。

本稿では、その中でもスノーコースとグランツーリスモ・ソフィー、マスターライセンスの3つを紹介する。

■舗装路とはまったく違うドライビングが求められるスノーコース

今回追加されたスノーコースの“レイク・ルイーズ”はオリジナルで、ホーム画面の“ワールドサーキット”から、“アメリカ”を選ぶと上部に出てくる。スノーの名の通り、雪が積もったコースだ。晴れの日では雪が照り返す日光が眩しかったり、夜間では周囲の照明と合わさってロマンチックな光景になったりと、なかなか画面映えする。

なお、走るには選んだ車にスノータイヤを履かせる必須。スノータイヤは45万Grで買えるので、任意のレースで一度でも1位になれば、稼いだお金でかんたんに手に入るだろう。具体的な範囲は不明だが、スノータイヤを装備できる対象は4輪駆動の車のようだ。

ゲーム内に収録されている通常のコースと違い、スノーコースは非常に滑りやすい。いつもと同じ感覚でブレーキを踏むと止まり切れずに壁に激突するし、軽くハンドルを切ってもろくに曲がれない。ちょっとした段差で跳んだ際、角度によっては車体がスピンする可能性もある。

裏を返せば、舗装路では難しい走りも可能だ。カーブしているコースの頂点に向かって突っ込んで、車体後部を揺らせて思い切りドリフトもできるし、雪をまき上げながら突き進む豪快な運転も楽しめた。舗装路でコースに沿ってかっちり走るのもいいが、4輪駆動の力でねじ伏せるような走りもシンプルかつ爽快でおもしろい。

既定のタイムで走る“サーキットエクスペリエンス”で筆者がオールゴールドを達成する際、当然ながらダートコースの“フィッシャーマンズ・ランチ”や“コロラドスプリングス”も走ったのだが、スノーコースを走る感覚はそれらのようなダートに近い。ブレーキもコーナリングも早めに心がければ、それだけで動きはだいぶ安定した。

追加されたコースはレイク・ルイーズひとつだが、そのなかに緩いカーブとロングストレートが特徴のトライオーバルを始め、そこに急カーブも交えたロングトラック、全長の短いショートトラックの3種が収録。それぞれには逆走バージョンもある。タイムトライアルやドリフトトライアルを合わせると、それなりのボリュームだろう。なお、サーキットエクスペリエンスはロングトラックの順走になっている。

豪快に走れるのは楽しいが、個人的には雪景色のなかでレースをする新鮮さも大きい。今回のようにオリジナルもいいが、できれば既存のコースのスノーバージョンも追加してほしいところだ。

■人間らしい動きでプレイヤーを翻弄するグランツーリスモ・ソフィー

参加する車の数や天候の状況といった、さまざまな設定を飛ばしてすぐに遊べるのがクイックレース。事前に求められるのは、走るコースと天候、AIの強さ(初級、中級、上級)くらいなので、サクッと走りたいときにちょうどいい。

PS5版限定になるが、そのクイックレースには通常のAIに加えて“GTソフィー”という専用のAIと戦う機能がある。GTソフィーはグランツーリスモ・ソフィーと言い、「GT7」を手がけるポリフォニー・デジタルと、「GT7」の販売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメント、AI分野を専門としたソニーAIが協力して研究開発を進めているレーシングAIエージェントだ。以前に発表されたソフィーからバージョンが更新され、“GTソフィー2.0”になっている。「グランツーリスモ」の公式サイトによると、9つのコースと340台以上の車に対応しているとのこと。

さっそく何回かGTソフィーと戦ってみたが、なにかと動きが人間らしい。こちらが直線を走っている最中に幅寄せしてきたり、抜き去ろうとすると縦軸を揃えて防いできたりするほか、フランスの“ル・マン24時間 レーシングサーキット”では、高速で猛追してくるGTソフィーに追突されてスピンしたこともあった。良くも悪くもプレイヤーらしい動きで、そのために運転が粗かったりもするが、そうした不安定さも含めてAIと戦うことの醍醐味と言えるだろう。

こちらが接触したり追い抜いたりすると、ソフィーは状況に応じて顔文字で反応する。

晴天時のサーキットでGTソフィーの車がスピンすることもあった。攻めた運転で他車と接触したのが原因だが、通常のAIならまず起こらない。筆者自身、「GT7」は400時間以上遊んでいるが、濡れた路面でレースをしたときを除いて、AIの車がスピンしたのは見たことがない。通常のAIは基本的に行儀が良いので、攻撃的な運転はほとんどしないためだ。とはいえ、いまの時点でスピンを確認したのは鈴鹿サーキットのS字カーブのみ。絶妙な加減速が求められる場所で起こることなのかもしれない。

ちなみにGTソフィーとの対戦は、初級や中級はともかく、上級はかなり難しい。今回遊んだ限りでは2位が最高だった。クイックレースでは、AIはこちらが選んだのと同じくらいの性能の車に合わせてくれるようだが、それでもきつかった。

クイックレースの報酬はCPUが強いほど増えるのだが、ここにボーナスも加えられる。ボーナスの対象になるのは、車を購入するたびに上昇していく“コレクターズレベル”と、そのサーキットにおけるサーキットエクスペリエンスの進行度。最低はゼロで、最高は400%。ふたつのボーナスで200%ずつ得られる。現状の金策と言えば、サルデーニャ・ロードトラックAで挑める“ワールドツーリングカー 800”などだが、ちょっとしたお小遣い稼ぎ程度の感覚ならクイックレースも視野に入りそうではある。

■さらに実践的で難易度の上がったマスターライセンス

“ライセンス”では「GT7」で車を走らせるためのテクニックが学べるのだが、ここに“マスターライセンス”が追加された。ノーマルライセンスと同様、国内と国際でB級とA級、そしてスーパーライセンスの5段階が用意されている。

クリアタイムを示す目安として、ブロンズ、シルバー、ゴールドの3つがあるが、ノーマルライセンスのときと同じくゴールドは難しい。複数の異なる角度を持つコーナーや、濡れた路面、つまりウェットを走るうえでのコーナリングなど、用意されている項目のレベルも上がっている。ウェットに加えて、今回のアップデートで追加されたスノーコースを使った課題もあるため、筆者自身、制覇するのに時間がかかった。

個人的な感覚だが、マスターライセンスに設定されたゴールド基準のタイムは、ノーマルライセンスよりもシビアだ。デモンストレーションで表示できるゴーストのAIを並走する際、ゴーストを追いかけるように走ってさえいれば、それなりに遅れてもゴールドを取れたのがノーマルライセンスだった。いっぽう、マスターライセンスの場合はデモンストレーションのゴーストに肉薄するレベルでないと厳しい。“マスター”を冠しているのだから当然ではあるが、オールゴールドの難易度は非常に高そうだ。

すべての項目をブロンズ、あるいはゴールド相当のタイムでクリアすると、対応するライセンスの等級ごとに報酬が手に入る。オールブロンズの場合はルーレットで使えるチケットで、オールゴールドの場合は車。今回はレクサスのLFA'10や、メルセデスのAMG GT Black Series ‘20などが手に入る。

ちなみに、報酬にはMP4/4 ‘88もある。F1の伝説的なドライバー、アイルトン・セナが乗っていたことでも有名な車だ。ふつうに買う場合、不定期に内容が入れ替わる“レジェンドカー”という店で、同車がラインナップに並ぶまで待たなければならないうえ、記事執筆時点の価格で10億Grもする。確実かつタダで手に入れるなら、スーパーライセンスのオールゴールドに挑んでみるのもオススメだ。

報酬も欲しいが、ライセンスに挑戦するのはドライビングテクニックを学べる良い機会でもある。各等級でオールゴールドを目指すかどうかはともかく、ノーマルライセンスを含めて一通りはやっておきたいところ。さまざまな車に乗ることで、自分も知らなかった適性と見つけられる可能性もある。

今回はスノーコース、GTソフィー、マスターライセンスの3つに絞って記事を書いたが、最初に列挙したようにSpec IIのボリュームは凄まじい。「GT7」が2022年3月に発売されて以来、1年半以上に渡って精力的にアップデートされ続けているなかでの今回の追加とあって、開発側の熱意を大いに感じられる内容だった。今後のアップデートにも期待したい。

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